iPhone包囲網のスマートフォン市場

 iPhoneの話題が一段落つき、国内の他キャリアがこれに対抗すべく、秋にはいわゆるスマートフォンの新機種を続々と登場させてくる。iPhone包囲網というわけだが、なにか国内ローカルだけの凌ぎあいという印象しかない。

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 発売当初の人気先行的な売れ行きから一転、それ以後売れ行きがあまり伸びていないという。年内に100万台という予測も現在のところ20万台前後に留まっているのだという。
 スマートフォンなる高機能のインターネット端末としてのiPhoneだが、一方で国内では標準になりつつあるおサイフケータイ機能やらワセグ機能が搭載されていない、若者には必須?の絵文字などが使えないなどの理由が挙げられている。しかしそういう表面的な理由だけではなさそうだし、今すぐiPhoneが多く売れなくても、もっと長い目で見ていかなくてはならないだろう。


 ひとつには国内ではiPhoneソフトバンクの組み合わせがある。iPhoneソフトバンクの携帯なのではなく、アップルのスマートフォンであるということである。ソフトバンクはいわば国内販売代理店のようなものである。それが営業とはいえ、ソフトバンクの社長が前面に出すぎるとイメージ的に違和感を覚える人は、他キャリアの携帯を持つ人にも多いだろう。ソフトバンクiPhone販売の権利をめぐって争ったドコモも一転、iPhoneを真っ向から敵に回すことになるのも皮肉なものである。
 アップルのイメージならば、やはりスティーブ・ジョブスである。iPhoneに魅力は感じつつも、セコンドマシンとしての携帯ならばともかく、キャリアを変更してまでというのはMacユーザ以外ではなかなか決断ができないだろう。一般ユーザにとっては、今のところは機能面も含めて様子見というところだろう。


 機能的な問題としては、ケータイというよりスマートフォンであるということの認識が、まだこれからというところだろう。日本のケータイは世界的にもやや特殊な発展をしてきた。いわゆるPDAは普及せず、iモード以後、携帯の高機能化という形で、これでもかとばかりに次々に機能が追加されてきた。かつてのソフトウェアのバージョンアップのように、あまり日常使うわない機能までどんどん増えてきた。そうした機能とスマートフォンとしての機能と比較することは、筋違いである。スマートフォンはネットに接続してなんぼのものである。オフライン機能とオンライン機能をいくら比較しても仕方がないのである。「ワンセグってまさかパケット料金かかりませんよね?」は、実際に自分が窓口で尋ねたみたことのあるセリフである。


 最後は結局は価格の問題である。基本料金はともかく、パケット料が従量制である限り、スマートフォンとしての先行きは頭打ちになって当然である。ネットから見れば、ケータイはまだ10年以上前の時代であるといってもよい。1分10円で話す公衆電話とあまり変わらない。iPhoneに対抗して、高機能のスマートフォンとしてタッチパネルだ、キーボード機能だとやっても、狭い国内市場の叩きあいにしか過ぎない。それほどのものが出せるならば、なぜ国際的市場に通用させることができなかったのか。「日本のプロ野球はレベルが高い」と国内では自負していながら、五輪では惨敗しているプロ野球を思わせる。


 今はそれほど数は売れないとはいえ、鎖国的な国内の携帯市場にスマートフォンの黒船来航となったのがiPhoneであった、ということになるだろう。PCでいえば1992年ごろのIBM互換機の国内市場参入と似ているかもしれない。世界に出ればiPhoneが標準となってしまっている現実があることになるだろう。