あきれる定額給付金

 政治の話題は避けたいが、あまりにも呆れる2兆円規模の定額給付金のことである。金持ちの政治家は何を考えているのかということはもちろんだが、そもそもこういうアイデアしか出せない財務省の役人というのは、いったい何なのだろうかということである。

社説2 疑問だらけの定額給付金(11/13)(NIKKEI NET)
給付金、街の声賛否両論「選挙対策そのもの」「高い店で食事」

 政治とは何をすることか、官庁の役人の仕事は何かと突き詰めてみれば、それは国民の税金をいかに使うかということでしかない。国の財政が逼迫して無駄遣いが云々されるようになって、いかに景気の良かった時代が税金のバラ撒きばかりをやっていたかということが、浮き彫りにされてきている。そこになおまた、バラ撒きを重ねようとするとするのだろうか。


 近年でいえば20年ほど前の、消費税が初めて導入された竹下内閣の頃に「ふるさと創生事業」として全国の市区町村単位に1億円をバラ撒いたことがある。これも消費税導入とのバーターだったのかもしれない。景気の良かった頃のずいぶんと太っ腹のバラ撒きだったのだろう。


 そして1999年の地域振興券である。ほとんど今回の定額給付金と同じ景気刺激策の発想だが、なぜ成功もしていない地域振興券の愚を重ねようとするのだろうか。老人と子供にだけ小遣いをバラ撒いただけで景気浮揚にはほとんど繋がらなかった。


 地域振興券に関しては、この時ばかりで終わったわけではない。実は形を変えて、職業訓練給付としてスケールは小さいものの、その後継続しているようである。職業訓練講座として認定を受けていれば、駅前のパソコン教室でも英会話教室でも行けば生徒はその授業料の数10%分の給付を受けることになる。逆に学校ビジネスにとっては旨みになったのが、NOVAのような問題を引き起こす要因ともなった。


 今回の給付金も「定額」というだけあって、何も考えていないに等しいことを表しているようなものである。一般庶民の方がよほどクールにとらえている。資本主義の国なのにこんな経済対策があるのだろうか。タダより怖いものはない。1回きり1万2千円とやらを恵んでやってやる代わりに、数年後以降はずっと消費税アップをするから覚悟しておけということだろう。消費税アップを考えれば、とても1万2千円どころではない。見え透いた選挙対策だという意見もある。それにしては実弾攻撃というあまりにも単純すぎて、怒りというよりも呆れの方が先に来てしまう。


 少し冷静に考えてみれば、首相はコロコロ変わっても郵政民営化だのバラ撒きにしろ消費税にしろ、国の財政の赤字の打開策として役人が一貫して考えていることは、産業を振興させることよりも、世界一と言われる日本国民の預貯金を何とか吐き出させようとしていることのように思えてならない。そのための給付金だったり消費税だったりで、経済刺激というより我々の預貯金に揺さぶりをかけているのだろう。