脳のように機能するコンピュータの開発

 人間の脳に近づくコンピュータという構想は、昔から幾度ともなく繰り返されてきたものである。ここにきて再びIBMが大学と連携して、新たなその試みをしようとしているようである。

IBM、5大学と提携し人間の脳のように機能するコンピュータを開発 (ITmedia)

 人間の脳のようなコンピュータは「考えるコンピュータ」という1960年代の人工知能から始まったと言えるだろう。たとえば人間のチェスの相手をできるとか、言語能力を持って人間と対話できるということに象徴された。それは近年になって、IBMのスーパーコンピュータDeep Blueがチェスの世界チャンピオンを破ったり、簡単な会話できるロボットが出現したりと、ある程度実現されたともいえる。


 けれどもそれをもってコンピュータが人間の脳に近づいたと思っている人はいないだろう。むしろますますデジタル情報が膨大となり、それを力まかせの方法(ブルートフォースメソッド)で処理して結果を得ているという印象が強い。プロセッサが並列化されてきてはなおさらである。アーキテクチャー的には脳に近づくどころか、むしろ逆の方向にエスカレートしているともいえる。またそれがインターネットの巨大なネットワークの発展にも繋がってきたといえるだろう。


 それらの個々の技術の進歩を踏まえた上で、改めて再び脳の機能に似せたコンピュータを目指そうというのだろうか。個々の機能を実現するデバイスは過去よりもさらに小型化したナノテクノロジーによるものになるという。ネットワーク的に見るならば、インターネットが外部に対して巨大化するものならば、脳をシミュレートするネットワークは内部に向かって小型化するネットワークだと見ることもできるだろう。


 コンピュータが脳を目指しても、結局は脳の仕組みそのものがよくわかっていないこともあって、いつの時代にも見果てぬ夢に終わってきた感があるが、この計画からは歴史的なブレークスルーは生まれてくることになるのだろうか。