消えた技術・消えた機器

 休日だからといって(実際は仕事があったが)昔話でもないが、ネットが進歩する一方でいつのまにか消え去っていった技術や機器は多い。組織の中のものであればリース期間が過ぎれば実物もなくなるので忘れ去っているが、自宅の中のものだとあるときふと古いものが出てきて、こんなものを使っていたんだなと思うこともある。PC関連の場合、ただ古くなったというのとは異なり、故障したわけでなくても仕様が合わなくなった、サービスがなくなった、パフォーマンスが全く時代遅れになったというケースが多い。それに関しては当然という感がするが、もっとも嫌になるのは当時の価格である。あのときかけたお金が今使えれば、どれだけのものを揃えられただろうかと考えると溜息が出てしまう。

音響カプラや親指シフトはどこへ?-消えた技術,消えた機器(ITmedia)
さよならフロッピー―記録メディアの移り変わり(ITmedia 10.11)

 すでにFDをめぐっての記録メディアの興亡のことを記したが、ネットワークからみの機器となると多くのものが消え去っていった。音響カプラはもう25年くらい前だろうから古すぎるにしても、続くアナログモデムなどで、むしろデータ通信としての電話回線の重要性が認識されたものだと思う。音声通話と同じ回線を使っているわけだから電話とモデムのどちらを優先するのかという問題が起きた。それ以前ならば当然電話が重要だが、次第にデータ通信の方が重要になってきたわけである。「お前のところに夜電話をかけてもいつも通話中だ」と愚痴をこぼされたものである。当然携帯電話などない時代の話である。


 今では標準装備が当たり前のNICだが、自分はこれをインターネット前のNetware全盛時代の1990年代初めの頃に求めようとしたことがある。なんとIBM純正品では、1枚10万円!もしたものである。それがMicrochanel仕様のものだった。純正でない、あるいはノーブランドでも数万円だったように思う。けれでも当時、ネットワークは必ず将来性があるという信念を持ち周囲も説得して、非純正製品を何枚か求めたものだった。


 そして当時のネットで消え去ったものといえば、ネットを引くのに奔走した10BASE-5のイエローケーブルがある。同じように10BASE-2も候補にしていた。結局なんとか将来性を考えて10BASE-5を引いたのだが、本当に黄色のケーブルが廊下の上を伝ったときは感激したものだ。ネットなどわからない人には通路の景観を悪くするものが出現しただけにしか感じられなかったかもしれないが。当時のフロッピーも含めて、ケーブル類、WindowsNTサーバーのバックアップ用テープなど、ジャンク屋ができるというほどあったものだが、今はすでに忘れてしまった。


 ネットとは無関係だが消え去ったもの、富士通OASYSに代表されたワープロ専用機である。コンピュータが得意な人だからというわけで、親指シフトの使い方とかMS-DOSファイルへの変換方法だとかをよく尋ねられたものだが、こちらは日頃はそんなものを使う気にもならなかったので困ったものだった。仕方がないのでマニュアルも見ながらあれこれやってみるのだが、PCのような自由度が全くない。ハードウェアはPCと同じようなものでありながら、初心者向けにするためかあえて多くのことができないようにしてあると感じた。何より日本ローカルでしか通用しないシステムである。そんなワープロ専用機は廃れるだろうと当時から思っていたが、その通りになって今では電器量販店からも消え去った。Wikiによれば2001年に製造が中止されたそうである。


 当時があったから今に繋がっていると言えば聞こえはいいが、時代が時代だっただけに(普通の意味ではそんなに昔ではないが)、ずいぶん無駄なことも多かったものだと思う。とはいえ、また10年後くらいから見れば、今も無駄が多かったということになり、結局はその繰り返しになるのかもしれない。