AppleがMacworldから撤退

 撤退というより「終了」というべきだろうか。MacworldといえばMac信者にとっては巡礼地みたいなものだったと思うが、Appleにとっては、もはやMacだけの時代ではなくなったということだろう。

AppleがMacworldから撤退―調講演はジョブズ抜きに(ITmedia)
S・ジョブズ氏、Macworldでの基調演説は見送りに--アップルの参加も最後に(CNET Japan)

 IDGとAppleの関係も取りざたされているが、ユーザにとってはそもそもこういうコンピュータのショーそのものがネットが普及した現在となっては時代遅れのもの、という感がしなくもない。かつては最新情報を得るためにわざわざこうしたショーに、たとえばアメリカとか台湾にでも出かけたものだが、現在ならネットでいくらでも最新情報は手に入るし、会場で配布されるソフトの体験版のようなものも、ネットで体験版どころかベータ版やフリー版をいくらでもダウンロードしてインストールしてみることもできる。せいぜい実際に会場に出向いて、価格的に個人的には買うことができないようなものを手に取って体験してみることくらいだろうか。自分も昔はこの手のショーに出かけて、後でゴミにしかならないようなパンフレットの類を、お土産よろしく紙袋にいっぱいに持ち帰ったのも懐かしい気すらする。


 Appleに関しては、Apple ComputerからComputerの文字が取れたことが転機にもなっているだろう。もはやAppleの主力事業はMacintoshではなく、iPhoneのように携帯事業だったりiTunesのような音楽配信事業だったりする。Appleの中ではMacworldではなく、Appleworldになっているはずである。


 そして噂が飛び交うジョブスの健康不安説である。Appleがいくら否定してもそれだけカリスマ性があるだけに、もしジョブスが一線から完全に引いたらAppleの方向性はどうなるのかという心配が、株価にさえ影響しそうである。


 自分は今はMacにはほとんど関心がなくなっているが、ジョブスの動向にもっとも関心があったのはやはりNeXT Computer時代である。自分の作ったAppleを追われ、カリスマ性を失うかと思われたら、今度はワークステーションのNeXTで一世を風靡したのである。自分はNeXTは手にできなかったが、そのOSであるPC版のNEXTSTEPに触れたとき感激したものである。結局Appleの方がうまくいかなくなり、ジョブスがAppleに復帰することになり、今はiPhoneAppleを完全に立ち直らせている。。まるでこの人の人生はITの世界の戦国武将のような感すら受ける。現在のUNIXMac OSは、自分から見ればNEXTSTEPそのものである。


 しかしそのジョブスもそろそろ第一線からは引きそうな気配である。同世代のライバルと見られたビル・ゲイツは引退したし、Sunを作ったUNIXの神様ビル・ジョイも2003年にすでにSunを退職している。かつてIBMのようなメインフレームの時代からPCやワークステーション時代へとコンピュータの主流を"Change"させたカリスマの旗手たちの時代も、そろそろ終わりを告げようとしているようである。