携帯電話しか持たない世帯が増加

 米国の調査ではあるが、携帯電話しか持たない家庭が増えているようだ。当然のような気もするが、今後、家庭に固定電話を持つ意味がどれだけあるのかという気持ちにさせられる数字ではある。

携帯電話しか持たない世帯が17.5%に――米調査(ITmedia)
小中学校への携帯電話の持ち込み禁止--教育再生懇談会が提言へ(CNET Japan)

 所得が低い人がやむにやまれず固定電話の所有を放棄するのはともかく、それにしても携帯電話があれば別に固定電話はなくても困らないという事実が根底にはある。
 固定電話を持ち続けていても、近年はめっきり使用頻度が小さくなった。いきなりかかってくるのは電話営業のスパム電話?ばかりである。これがNTTなんたらからや銀行からも来るから困る。「お得な電話サービスに加入しませんか?」「資産運用はいかが?」というわけである。携帯電話と違って、相手がこちらの電話番号を知っていて当然の相手だからである。


 よく電話がかかってくるような相手はプライベートだろうが仕事だろうが、すぐに携帯にかかってくるし、こちらもそうである。相手の行動パターンもわかっているし、何もわざわざ留守番電話の「ただいま留守にしております・・」を聞くために固定電話にかける必要もない。何より音声電話をかける必要があるのは緊急でとりあえずの返事をもらうためのことが多い。急ぐ話でなければメールで十分だからである。


 昔は誰かに電話するということは、本当に「家に電話する」という感じだった。電話しても家の人の誰が最初に出てくるかはわからない。親兄弟で声が似ている人が出たりすると、慌てて本人と間違えて、いきなり用件を切り出したりすることもあった。また父親が出たりすると、変な関係でもないのに「娘とはどういう関係ですか?」などと尋問?されるようなこともあった。ただでさえ電話の会話は苦手意識があった自分には、他人の家に電話するのは相当に勇気のいることだった。


 今はそんな面倒なこともなく、仮に相手がその場で携帯に出なくても折り返しすぐ電話が来るし、誰から何時ごろ電話があったというだけで、何の用件かさえわかる。便利にはなったのだが、世間ではこれが社会問題になっている。小中学生には携帯を持たせるな、と国が率先して規制を行なおうとしている。出会い系でいえば、昔の固定電話の時のように、親が「うちの子供とどういう関係ですか」というチェックができなくなったからだろうが、しかしこういうことを決めたがる教育審議会だか何だかの人の発想が、何かおかしい気がしてならない。「臭いものには蓋」という発想だけでは何も生まれないだろう。もっともここで教育問題を議論したいという気にはなれないが。


 固定電話がいらない時代が来る。これは携帯がとってかわるということでなくて、PCとネットがとって代わるということである。IP電話SkypeだのYahoo!メッセンジャーみたいなので十分だし、固定電話の会社そのものがいらなくなる。お得な電話料金プランも何もないだろう。電話会社はプロバイダーのようになって生き残りをはかるしかないだろう。携帯といっているのは、今でいうスマートフォン、PCの端末に過ぎないものになる。そして、電話という概念そのものが変わろうとしているのに、いつまでも昔のイメージだけでとらえて社会問題にしていること自体が滑稽な話になる。もう少し先のことを考えた上での道徳だのモラルだのを考えていくべきだろう。