上原、オリオールズ入団

 また巨人の生え抜きの選手が去った。巨人からメジャーへ流出したのは松井に続いて2人目だけだから多いとはいえないが、それでも6年前の日本一の時の、4番とエースはじめとする生え抜き選手はほとんどいなくなったようにも見える。残っているのは高橋由、高橋尚、阿部くらいか。

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 上原といえば、巨人入団時からメジャー志向はあった。実際にメジャーからの勧誘もあったようだが、現在のように多くの日本人選手が活躍しているような時代ではなく、野茂や長谷川だけだったはずである。日本のプロ野球を飛び越えてメジャー入りするという可能性はありえなかった。「今は自信がない」との理由で巨人入りしたわけだが、そうした経緯から巨人となんらかの密約があるのでは、とも言われた。


 また、上原の座右の銘が「雑草魂」。高校時代も無名だったため、どこからも誘いがなかったのか、野球選手には珍しく浪人を経験している。その頃がよほど苦しかったのか、それが精神力のベースとなっていったようである。北京五輪ではさんざんだった日本野球だが、上原が大学3年の初めてのアマだけの日本代表の時代に、当時151連勝中だったキューバの連勝を止めて勝利投手になった実績は、燦然と輝いている。以後も国際試合で無敗の強さを発揮することになった。


 そして新人1年目からのいきなりの20勝。テンポよく投げ出されるボールに小気味良く打者が打ち取られていった。巨人では3度の20勝を挙げた斎藤以来のことだった。
 しかしさすがにそこはプロで、2年目からはそう簡単にはいかず、自身の怪我もあったりで、勝ったり負けたりが続いていった印象しかない。2年前はストッパーに転向してなんとか成功したが、昨年は先発復帰したもののなかなか勝つことができなかった。年齢的にも、もう全盛期は去ったという見方もできるだろう。もっと早くメジャーに行っていればとも考えられるが、他球団のようにポスティング制によるメジャー移籍を認めない巨人に従い、フリーエージェントになってからの移籍であるから、すでに33歳になっている。


 そしてついにメジャー移籍が決定。オリオールズは先発投手として期待しているというが、150キロ台の球速を持つ投手がひしめくメジャーの中にあって、上原の球速は140キロ台しかないので本当に通用するのかという不安はなきにしもあらずである。ただそこは野茂以来、日本のエース級のベテラン投手のほとんどは通用してきたという実績がある。これは日本人投手は精密なコントロールに優れているからといえるだろう。上原が巨人の若手時代には、桑田、斎藤、槙原という投球術のお手本がいた。桑田もメジャーに挑戦したものの、さすがに球威的な衰えから投球術だけでは長続きしなかった。上原の年齢ではここで環境を変えて心機一転すれば、十分に通用して活躍できるチャンスはあるだろう。日本で一度はお払い箱になりかけて、メジャーで復活した斎藤隆がいい例である。


 オリオールズといえば、東地区で今年は最下位ながら歴史のあるチームである。1970年代が全盛期だったようである。東地区にはレイズに岩村、レッドソックスに松坂、岡島、斎藤、ヤンキースに松井、井川が同時に所属することになり、チームだけでなく日本人対決も激戦区になった。本人も松井とのガチンコ勝負を期待しているようである。最下位チームということが、むしろ挑戦者としての意識を高めてくれればよいと思える。年俸的にはとても雑草とは言えないが、無名時代の精神力を思い出して国際試合に挑むつもりで「雑草魂」で結果を出してほしいものである。巨人1年目のときのような快投を期待したい。