グレイシー柔術の創始者死去

 グレイシー柔術の創始者であるエリオ・グレイシーが亡くなった。95歳だから常に命の危険と隣り合わせの格闘家としては長生きだったと思う。エリオといえば近年ではヒクソン・グレイシーホイス・グレイシーの父であり、グレイシー一族の長として息子たちの試合の度に来日していたから、よく知られた人物だった。

エリオ・グレイシーさん95歳大往生(nikkansports.com)

 そしてもはや伝説といえる柔道・木村政彦との1951年の格闘技試合が有名である。400戦無敗の触れ込みのヒクソン・グレイシーが10年ほど前にブームを起こした頃、にわかに、かつてグレイシー柔術に勝利した唯一の日本人として、木村政彦の名がクローズアップされた。木村は柔道の世界でこそよく知られた存在だが、一般にはプロレスで力道山に不本意な敗北をして忘れ去られた存在になっていた(力道山のブック破りだったとされる)のが、無敗のグレイシー柔術に勝った男として、時を超えて再び注目されることになった。エリオとの一戦はグレイシー柔術も木村をも有名にすることになったといえる。


 グレイシー柔術も元を正せば、講道館出身の前田光世(コンデ・コマ)が伝えた柔道を改良して体系付けられた格闘技である。それが時を超えて、10年ほど前から日本にPRIDEなどの総合格闘技ブームを起こすきっかけとなったのだから面白いものである。
 グレイシーも木村も伝説に近いものとなったが、今後はまた、格闘技に転向した石井慧などがグレイシー柔術と対決していくこともあるかもしれない。