SNSとテレビが結びつく可能性

 昔はテレビを見ながら食事とか勉強とかを「ながら族」と言われたもので、お行儀の悪い習慣の1つだったものだ。もちろん今でもあるだろうが、子供や若い世代は減っていて、むしろ中高年のテレビで育った世代がこの傾向にあるようだ。家に居る時間の長さもあるが、まさに育った時代が影響しているといえそうだ。

SNSユーザーの36%はテレビでSNSが使いたい―米調査(ITmedia)
「テレビを見ながらネット」が多いのは30代女性―米調査(1.14)
増える中高年のオンラインユーザー―米調査(1.31)

 ネットユーザが中高年まで広がってきてくると、古い時代のものと新しいものが意外な形で結びついてくる可能性がある。ユーザ主導のコミュニティサービスであるSNSとテレビが結びつけば、というのはまさにこうした例かもしれない。デジタルテレビがネットに近づいていることは確かだが、それはショッピングやアンケートなどテレビ局やコンテンツ提供事業者との交流であり、ユーザ同士の交流はあまり考えられてこられなかった。


 それを結びつける一番有力なものがSNSだということを示唆しているかもしれない。デジタルテレビと組み合わせた使い方は、SNSに組み込まれた機能によってさまざまだろうが、なにしろ画面が広い。Webcamで互いの姿を画面に映しながら、あたかも同じ部屋にいるかのようなリアルタイムコミュニケーションができる。テレビ電話を電話でなくて、テレビそのものでできるということにもなる。また昔であれば、大げさなテレビ会議システムのようなものでなければ不可能だった複数の人との同時コミュニケーションも、茶の間で簡単にできてしまう時代になってくることになる。


 テレビを見ているユーザ同士がデジタルテレビで通信しながら、リアルタイムで同じ番組を見ながらネットでやりとりをするということも考えられそうだ。映画やドラマでも1人で見るより、家族や友人と一緒に見る方が共感を得たり盛り上がってよいという発想である。SNSの単純な交換日記などのようなものより、話題が豊富になるかもしれない。「放送と通信の融合」などと大げさな建前を言わなくても、日常の家族や友人、恋人との交流がデジタルテレビ同士で、リモコン操作だけで行えるという可能性は有力かもしれない。またこれは、新しいテレビというものの姿にもなるかもしれない地上デジタルに強制的に移行したからといっても、肝心のテレビのコンテンツそのものが大きく変わらなければ、あまり意味はない。ユーザにとってはSNSのように新しいことができるようになってこそ意味があるともいえる。ただそれが、テレビ、あるいはテレビ局そのものが生き残ることに繋がるかどうかはまだわからない