不況がSNSによる人脈作りを発展させる

 大不況が人々のオンライン参加に加速をかけている。不況で失業した人達が余った時間をネットに接続して過ごしているからだという。またSNSなどでの人脈作りという側面も大きくなっているようである。

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 暇になった時間をオンラインゲームなどで費やしているようなケースはともかく(おかげでオンラインゲーム業界は好景気?)、職探しにSNSにアクセスする人が増えてきているのは、興味深い現象ではある。日本ならすぐハローワークなどが思い浮かぶが、アメリカは、もっと個人のキャリアをアピールする風土である。自分のプロフィールや経験をなるべく多くのコミュニティに売り込むことによって、職を得られる機会を増やそうと考える。日本でいうと人のコネ(コネクション)だが、このコネがSNS化されてくるというところがネット時代らしいともいえる。


 日本ではmixiは個人の趣味的なコミュニティ中心のようだが、比較的ウェットな人間関係を望んでいるのかもしれない。また逆にそれに疲れると飽きやすい原因にもなるのだろう。アメリカのSNSは、もっとビジネスライクな意味でのコミュニティになっているようである。SNSに登録して自分のプロフィールを公開すること自体が、日本の派遣会社ではないが就職希望の「登録」をしたようなことになる。それをきっかけにした交流から就職先が見つかる可能性ができ、実際に企業の人事が見るケースもあるのだろう。簡単に1次の書類審査ができるようなものだ。アメリカのように雇用や転職がドライな社会でこそともいえるが、SNS本来の意味のソーシャルネットワーキングに近いのかもしれない。


 不況によってネットに参加する人が増えたということ自体が、新しいビジネスが生まれるチャンスでもあるという気もする。ネットによって、能力を余した人材を集めてネットでブロジェクトを組んで仕事にしてしまうという可能性がある。「職場」となるのはコストのかからないクラウドがある。つまりクラウドにプロジェクトを遂行すべくキャリアを持った仕事のメンバーを集め、顧客もクラウドに集客する。そこで付加価値の付くサービスを提供できるかどうかである。具体的にどういうビジネスができるかとまでは、すぐには言及できないが、人が多くなれば可能性が大きくなるのは人の世の常である。


 不況脱出には、元に戻そうとするよりは、新しい環境で新しいビジネスを追求する方が経済に活力が生まれてくるであろうとは思う。あまり資金も必要とせず、人材で勝負するビジネスこそ、ネットやSNSという手段を使ったものとしては有望であるように思えるのである。