Windows 7と金融危機でVistaにトドメ

 Windows 7のベータ版が予想以上に好評なだけに、ますますWindows Vista導入を阻害するという皮肉な状況を生み出しているという。ある程度予想されたことではあるが、本当にWindows 7のせいだと言い切れるのだろうか

好評「Windows 7」が阻む「Vista」企業導入-MSはアップグレードスキップに..(CNET Japan)

 そもそもVistaが不評だったために慌てたMicrosoftは、話題を次期OSのWindows 7に向けようとしていたはずである。Vistaを悪夢か事故だったことにして、先を見据えようというわけだったはずである。2010年初頭と言われていた出荷時期が年内という噂さえ出ている。そうしてWindows 7がベータ版の段階で意外にも好評だったために、ただでさえ不評だったVistaの営業が一層難しくなったというMicorsoftの事情が生じたようである。むしろVistaが不評すぎたためにWindows 7が良く見えたのではないかという気さえする。


 XPからVistaへの移行では、スペック的にもハードウェアのリプレースを余儀なくされ、多くのオープンソースソフトウェアの動作も保証されなくなるなど、コストをかけて不具合を買うような愚行に走ることは、業務系ではとても無理な話である。企業のVista導入が30%に留まっているのが如実にそれを表している。


 そこにきて昨秋から金融危機の影響で、名だたる企業からして急速に軒並み業績が悪化して、とてもではないがインフラ再整備の資金など確保できる状況ではないだろう。事実上、これで現時点での企業のVistaの導入には完全にピリオドが打たれたと言ってもよいだろう。ユーザとしては今後の1年ほどをいかにやり過ごすか、ということになる。多少コストのかからないネットブックを導入するにしても、また割り切ってXPをこの段階で入れるか、あるいはOfficeだけは2007にしておくかなどの工夫が必要である。


 そこでMicrosoftは今度は、VistaからWindows 7への移行ならスムースにいくが、XPからの移行は保証の限りではないという「脅し」に出てきたように見える。これはユーザを大事にする企業の姿勢といえるか、甚だ疑問である。少なくともMicrosoftは2014年まではXPのサポートを延長したはずである。そうであればその期間内にユーザが他のWindowsにアップグレードする動作環境を保証するのも当然であると思える。以前のWindowsでは、これほど長い期間のサポートを行うことはなかった。ユーザの要望に応える形でサポート期間を長くしたために、今度はOSバージョンの「飛ばし(スキップ)」が生じることになった。


 それほどVistaに移行を促進させたいのならば「Vistaから7への無償アップグレード権」を保証するべきだろう。「VistaからXPへのダウングレード権」などという滑稽な権利に比べれば、よほどユーザ本位のまともなサービスだろう。どうせ売れないVistaではなく、Windows 7の先行販売をするようなものである。


 とうとう、金融危機の影響がVistaにトドメまで刺すことにまでなったか、というのが実感である。徹底した経費節減の折、まさか社員をリストラしてVistaを導入すれば景気が上向く、というものでもあるまい。