モニターとVDT症候群対策は

 PCで長年仕事をする人には職業病ともいえる深刻な問題がある。それはモニターを見続けていなければならないということである。歳をとってくれば近眼に加えて老眼も入ってくる。眼鏡の度数は固定だが、人間の視力は減退である。またモニターとのミスマッチは目の疲れや肩こり、首の痛みなどを招く。自分も眼鏡をかけているが、時代とともにモニターとの関係は考えさせられる。

IT戦士の職業病「VDT症候群」対策は(ITmedia)
6割以上が「使ってないPCが自宅にある」(ITmedia)

 かつてはPCのモニターはCRTだった。テレビを至近距離で凝視していたようなもので、目に良いはずはなかった。加えて当時から問題になっていたのはCRTの出す電磁波の人体への影響である。世界でいろいろな研究はあったようだが、あまりはっきりした影響はわからなかった。遺伝子に影響するせいか、男性プログラマーには女の子しか生まれないなどという噂もあった。ワープロ専門のOLは人体への影響から保護するために、鉛入りエプロンをかけて作業をする人もいた。


 いずれにしてもCRTから出る光は輝度が強くて目に良いはずはないので、自分は目を守る手段としてモニターを集中している時間をなるべく減らすようにした。逐次処理させるようなことはなるべく避け、ルーチンワークはなるべくスクリプト化して自動処理させるようなテクニックを身に付けていった。簡単に言えば、コマンド1発だけ入れて、後は結果が出るまでモニターを見なくてもよいようにすることである。もっと言えば、結果もファイルに書き込んでしまえば、その場では見なくてもよい。デバッグで時間がかかりそうなときは重要なエラー出力部分だけをプリントアウトして、オフラインでじっくりデバッグするなどのスタイルを身に着けた。実際、集中力はそんなに長い時間続くものではないから、オフラインの気分転換をした方がエラーの原因も見つけやすい。


 そのうちにノートPCに続き、デスクトップPCにも液晶モニターが普及してきた。初期の頃は、価格がCRTより割高とか、モニターを見る角度によっては見にくいとか画質の問題などあったが、上記の目への影響、電磁波、省スペースなどの理由から、強く提案したものだった。昔の職場で当時、現場を知らない外部のコンサルタントが、価格と画質を理由にCRTを提案したのには腹が立ったものだった。「今後は絶対に液晶モニターの方が主流になる」と主張して押し切った。今では議論にすらならない問題である。それどころかデジタルテレビもそうなってしまった。地デジに移行以後は100%そうなるだろう。


 しかし、液晶モニターに移行して目には楽になったかというと、新たな問題が出現してきた。インターネットの普及、Webの普及である。つまりWeb画面を凝視している時間が圧倒的に増えてきたのだろう。長時間Web画面を見ていることが、新たな職業病の原因となってきているのであろう。昔はワープロにしろプログラミングにしろ、画面のテキストを凝視しているだけだったが、現在ではグラフィックスや動画も含めて、賑やかな動的な画面を長時間見る必要が生じている。コンテンツの内容にもよるが、インターネットで情報量が爆発的に増えただけに、それとにらめっこする時間も飛躍的に増大したと言えるのだろう。オンラインのままでもオフラインでも見ている時間は変わらない。


 昔からPCを買うときは、PC本体よりもモニターを重視して買うべきであった。PCそのものはせいぜい数年の寿命だが、モニターは10年はもつし、毎日直接見るのはモニターだからである。自宅にも古くなったPCは沢山あるのだがモニターは現在2台しかない。変にケチって安物を買うと、自分の体の方を消耗させることになりかねない。なおかつ日常的作業はノートPCしか使っていない。
 健康のために、モニターのWeb画面に向かう時間を減少させるには、テキストの時代とはまた違った工夫が必要になるだろう。少なくともクリックするたびに変わる画面を毎日長時間凝視するだけのパターンは避けたいものである。