「週刊誌」から「瞬間メディア」へ

 雑誌や週刊誌などの紙メディアの休刊などが相次いでいる。ネットの普及によって情報があふれ、わざわざお金を出してまで雑誌媒体を買って読む人が少なくなったことが根本原因のように挙げられているが、雑誌側もネットを利用した「週刊」ならぬ「瞬間」メディアの試みを行うという。冗談半分のように聞こえる講談社の「瞬刊フライデー」「瞬刊現代」だそうである。

「瞬刊フライデー」「瞬刊現代」 デジタルサイネージで「瞬刊誌」実験(ITmedia)

 つまるところ、週刊誌を売り込むための瞬間的なCMのようなもので、現代とフライデーの記事見出しや写真、コピーを3秒間だけ表示する。テレビ番組の予告編みたいなものだろう。しかし予告されるものは紙メディアである。瞬間的とはいえ、映像で流されたものの本体は映像ではないところに、何か逆転したものを感じる。確かに写真週刊誌のように、センセーショナルな1ショットとか、週刊誌の電車の吊り広告(自分は釣り広告だと思っている)の記事タイトルやコピーに、瞬間的に「これは、どういうことだろう?」と、関心を惹かれることはある。だからといって、すぐに週刊誌を駅売りやコンビニで買いたいと思うかどうかである。よほど、自分にも関わりのある性急な話題でもなければ、答えはノーだろう。


 ネットだと無料で情報が手に入るからということもあるが、従来の紙メディアと違うことは、記事の即時性と選択性であると思う。じっくり1週間の話題を振り返って検証するのもよいが、多くの人にとってはそんな余裕はない。時系列で追跡できるのは関心のあるジャンルだけでよいし、最もほしいのは最新の話題だけである。そして雑誌のように有無を言わさず、話題がパッケージになっているものは特に欲しくはない。音楽でもジャケット単位ではなく、曲単位でダウンロードして欲しいのと同様である。ソフトウェアでも同様である。


 結局、情報量が大量になっただけ、いかに自分に必要な情報だけを入手するかということが、ネットの上では常識になった。1つの情報を得るために、不要の情報をその何十倍も一緒に手に入れなければならない、というやり方がもはや時代遅れになっているのだと思う。自分は買ったことはないが、デパートなどの新春初売りの「福袋」を買わされるのと似たようなもののような気がする。福袋の中味は選べないわけで、多くの人にとっておそらく不要のものの方が多いだろう。


 しかし週刊誌を売ることが目的ではない、「瞬間メディア」そのものは可能性があるように思える。まさにリアルタイム性に近い記事を提供するものである。最近のものではライフストリーミング」がこれに近いだろう。リアルタイムとはいっても、中継を長い時間ずっと見ている余裕は多くの人にはない。それをポイント、ポイントを記事や写真で、ほとんどリアルタイムで報じるやり方である。2ちゃんねるの用語に「今北産業というものがある。これは「今来たばかりで状況がわからないので、誰か親切に3行でまとめて説明してくれませんか」という意図である。この発想で記事にするのが、3秒とは言わないが「瞬間メディア」という可能性を感じさせるのである。twitterなどにも通じるものがあるかもしれない。