IBMがSun買収に動く?

 やや驚いたのが、IBMがSunを買収に動くのではないかとの報道である。単なる噂の域かと思ったら、すでにHPに売り込んで断られたとか、65億ドルの金額とか、かなり具体的である。ITの世界では、昨年のMicrosoftYahoo!買収に動いたのに続く大きな買収話である。この経済不況の中、IBMは本気で動こうとするのだろうか。

「IBMがSun買収に向けて交渉」の報道(ITmedia)
IBMがサンと買収交渉、米紙が報道 (ITpro)
米サンがクラウドサービスに参入、「オープン技術を全面採用」
HPがSunを買収する日(ITmediaエンタープライズ 3.2)

 記事によると、Sunの方から身売り話を大手IT企業に持ちかけているという。それだけ経営が逼迫してきているということだろうか。確かに近年は慢性的に赤字で、2000年代前半には多くのジャンルで敵対関係だったMicrosoftとも和解して提携したりして、多額の融資をしてもらい、なんとか経営を建て直したという話もある。また最近IBMともSolarisで提携を行っている。一昔前なら、直接的なライバルと提携するなど考えられなかったことである。


 結局、1990年代からワークステーションがPCに押されてサーバー分野でのシェアが落ち続け、今ではSolarisよりもLinuxサーバーによってエンタープライズ市場でも危うくなっているだろう。OpenSolarisにしても、PCサーバーへの進出は時すでに遅しの感があった。Javaを初めからオープンにしたことは、インターネットの普及やオープンソースの浸透にも大いに貢献したと思われるが、JavaそのものでSunに利益をもたらしたことは少なかったのかもしれない。


 クラウド時代にはクラウドベンダーは5社しか残らないという話がある。GoogleAmazonMicrosoftIBMとあと1社くらいだとすれば、普通に考えればSunがその1つに入ってよさそうなのだが、クラウドに理解を示しながらも、なかなかそういう話が聞こえてこなかった。おそらくクラウドのインフラを整備するだけの経営の体力が追いついていないのだろう。そうすれば体力のある企業に委ねるしか、クラウド時代に生き残ることができないと判断しているのかもしれない。


 買収が実現するかどうかはまだ不明だが、失敗してもSunはジリ貧になっていく公算が高い。1980年代にはUNIXワークステーションは一世を風靡した。Sun、NeXT、DEC他があった。DECはCompaqに吸収され、そのCompaqはHPに吸収されている。NeXTはスティーブ・ジョブズが生み出し、MacUNIXの遺伝子が受け継がれている。そして事実上、ワークステーション唯一の生き残りだったSunIBMに吸収されることになるのだろうか。あらためてITの世界の栄枯盛衰を感じさせられる。