Sun、Twitterの買収は暗礁か?

 直接は関係はないが、ネットの世界では大きな話題の買収話が2件、同時期に進行している。IBMによるSun買収とGoogleによるTwitter買収である。マスコミのスッパ抜きが飛ばしかはわからないが、経済的にも大きな刺激を必要としていることが背景にもあるように思える。

サンがIBMとの買収交渉打ち切り,米メディアが報道(ITpro)
IBM-Sunの買収交渉、破談の危機に?(ITmedia)
Twitter、「Googleと買収交渉」のうわさにコメント(ITmedia)

 SunもITの世界ではすでに古い企業とすれば、IBM、Sunは古い企業同士の合併話であり、両社の企業戦略ばかりではなく、株主の意向などにも左右されそうである。IBMによる買収の話が明るみに出た途端に、Sunの株価が一時的に跳ね上がったことにも表れている。IBMが買収額を引き下げたら、今度はSun側が交渉に難色を示したという。もはや買収の是非は、買収額だけの問題なのだろうか。ITの文化の異なる両社が合併することによる、両社はもとより、ITの世界に与える大きな影響についての問題はないのだろうか。個人的には、もし買収が成立すれば、これはSunという企業の消滅であり、ワークステーション時代の完全な終焉を意味するように思えてならない。もっとも買収されなかったとしても、Sunはよほどの大きな流れを引き寄せない限り、クラウド時代に生き残っていくことも厳しいかもしれない。


 一方、TwitterGoogleに対するスタンスは、YouTubeに近いかもしれない。独立企業のままで伸ばせるだけ伸ばしてから高く売ることもできるだろう。YouTubeの場合は動画だけあって巨大な投資と著作権問題の訴訟費用を必要としていただけに、Googleの傘下で自由にできることに意義もあったが、Twitterはテキストサービスだけに、それほど大きな投資を必要としているとも思えない。Google側からすれば、人気の高いサービスを提供しているベンチャー企業を、他社に獲られるより前に押さえておきたいという意図があるかもしれない。実際にすでにFacebookTwitter買収に動いていたという。


 どちらの買収話も簡単には行きそうもない。結局、騒いだだけで何も起こらない可能性もある。買収されるのがよいのか、そのままがいいのかは何ともいえない。昨年、MicrosoftによるYahoo!買収話が騒がれたが、Microsoftと一部のYahoo!の株主にとってだけ都合のよい話だったようにしか思えない。それに対抗するためのYahoo!Googleが検索広告で提携する話も、独禁法で面倒な事になりそうになったら、Googleがあっさりと降りて、結局元通りのままとなった。まだ、金融危機が訪れる前の話である。


 今回の買収話もITの世界にはよくあることともいえるが、共通する大きな背景としては、経済不況とクラウドへの加速があるように思える。企業収益はどこも赤字で株価も下落する一方である。企業としての生き残りのための企業合併と、景気への刺激が期待される面もあるだろう。徹底した経営の合理化と新商品開発が求められる。この状況とクラウド化は時代に合致する。しかしクラウドの主流になりうる企業の数は限られると予測されている。不況下での日本の銀行の合併ではないが、いくつかのクラウドの極へと集約されていくことが予想される。Googleは確実にその1つであり、さらにクラウド上で新しいサービスを提供できる企業を取り込んでいくことだろう。IBMとSunは、今のところ単独でクラウドの極になりえるかどうかは微妙なところである。しかし合併すればIBMがインフラ部分を、Sunがサービスに相当する部分の役割を持ち、大きな勢力になりえる。しかし市場の利害と、ITの大きな潮流は必ずしも合致しないことも多い。技術的な優れたものを提供してきた企業が、必ずしも生き残れるわけではないことを、歴史は証明しているからである。