イチロー、張本を抜く日本最多3086安打

 イチローがついに、張本勲氏の日本の安打記録を更新する3086安打の記録を達成した。タイ記録に並ぶ3085安打目は満塁ホームランを打つなど、WBC疲れからか開幕欠場をしていたとはいえ、絶好調の状態のようである。

イチロー張本氏の前で日本最多3086安打(nikkansports.com)
イチロー「いい景色」日本新3086安打!(SANSPO.COM)

 その記録達成の瞬間を見届けようと、張本氏自身がスタンドで見守ったのが大記録達成を加速させたようだ。WBCのときはプレッシャーのせいか、なかなか結果を出せずにいたが、自分の記録については、日本プロ野球の大先輩の存在がむしろ良いプレッシャーになったようである。実は張本氏はイチローが欠場明けのこともあり、記録達成には1週間くらいかかると内心思っていて、その予定で来ていたという。しかしイチローの前では、タイ記録の達成時には祝福すると同時に「明日、日本に帰る」と言ったのだという。つまり次の試合でイチローがノーヒットで終われば、張本氏はイチローの新記録達成を見ることができずに帰国しなければならない、というプレッシャーを暗黙のうちにイチローにかけたことになる。イチローは張本氏が初めから1週間の予定で来ているとは知らされていないから、この言葉を真に受けたわけだ。


 ところがそれを力むような悪い方のプレッシャーに感じずに、むしろ集中力を高める結果となったようだ。その結果、2打席目で文句なしのヒットで新記録を達成し、張本氏も本当に早く帰れるようにしたわけである。


 張本氏といえば日曜日朝のTBS番組の中で、いつもイチローの記録が張本氏の記録を抜きそうなことを問われると「自分の記録は日本だけで達成した記録」で、レベルの下がったメジャーでの記録は含まれていないから自分の記録の方が上、のようなコメントをまじめな顔で言うので、いつも出演者の笑いを誘っていた。テレビ向けに負け惜しみをネタにしていたともとれるが、イチローと張本氏といえば、イチローがまだオリックスの若手時代にその打撃の才能を早くから見抜き「おれの記録を超えるのは、お前だけだ」と、イチローに暗示をかけるようにアドバイスしていた関係だった。その張本氏の当時の予言が現実になる瞬間に、張本氏自身が生で見守っているからこそ、集中できた結果だったのだろうと想像する。


 記録のイチローとWBCでは記憶のイチローにもなった。記録の方は大きなケガでもなければまだまだ先がありそうで、その意味では記録もまだ通過点に過ぎないわけで、前人未到の領域にどこまで進むのかという興味が続くことになりそうである。