ファイル共有ソフト利用禁止を大学に要請

 Winnyなどによる情報漏えいが社会問題化して久しいが、著作権権利者者団体が大学にWinnyを使わせないように異例の申し入れ?を行っているのだという。情報漏えいや違法ダウンロードは確かに避けるべき問題ではあるが、この申し入れは少しおかしくはないだろうか。

ファイル共有ソフト使わせないで、全国の大学・高専に要請文(INTERNET Watch)
「ファイル共有ソフト、使わないよう指導を」―ACCSなど..(ITmedia)
全国の大学・高専にファイル共有ソフトに関する要請文を送付(ACCS)

 統計によれば、音楽や映像、ソフトウェアなどをファイル共有ソフトでダウンロードするネットユーザが10%を超えたという。著作権権利者者団体からすれば、これが違法ダウンロードの可能性が高くなっていることになり、ひいてはコンテンツの売り上げの減少、損害につながっているというロジックなのだろうか。


 しかし、だからといってなぜ世間一般の話を大学に要請するのだろうか?ネットユーザは若い人が多い、特に大学生くらいの年代が違法ダウンロードをしているに違いない。大学の場が違法ダウンロードの温床になっているのではないか?という決め付けだろうか。ならば、大学に取り締まってもらおう、というわけなのだろうか。


 少なくとも大学の中のネット環境のセキュリティは、はるかに厳しい。ましてや研究や教育以外に利用できる余地はいっさいない。PCやネット環境など教育設備に国の補助金を受けているからである。無駄なポートはいっさい通さないし、プロキシによるアクセス制限も厳格である。IDからすぐに本人が特定できる。アクセスのIDから授業の出席をとっているケースすらある。仮に違法な使い方が発覚すれば、ただちにアカウントの停止をくらってしまう。最悪、学則に則り、処分される。だから何を心配しているのだろうか。ただし、自宅でのネットの利用とか、大学の外での活動には関知しない。大人なのだから自己責任である。プライベートで大麻など隠し持っていて逮捕されたら、即退学だろう。


 大学の教育としても「Winnyを使うな」ではないだろう。著作権についての意識、セキュリティの意識を啓蒙することはあるだろうし、一方でオープンソースソフトウェアの考え方、活用を行うこともあるだろう。裁判もあるとはいえ、Winnyそのものが違法なのではない。また情報漏えいの危険もあるからとはいえ、Winnyでなくとも重大な情報漏えいに関しては、大学でも処分される。その程度のことは、お上(文部科学省)に言われることはあるだろうが、外部団体に要請されることではない。


 大学への要請文を出して、今後も監視を続けるというが如きは、言いがかりのようにしか思えないのである。IPAのような団体がセキュリティに関して、被害をこうむらないように注意を促すのならまだわかるが、利益団体が自分達の利益が損なわれる可能性を排除する目的で、公共性の高い大学に要請を行うことに違和感を覚えるのである。