OracleのSun買収後に気になること

 OracleによるSun買収の発表から一夜明けても、まだ興奮覚めやらぬというところではないが、この話題に関連する記事やブログが多数発生している。いろいろな人がいろいろな事を言っており、まるきり正反対に思える評価もあるように思える。実際に買収完了後の方向性が見えてくるまでは、疑心暗鬼のことも続くことだろう。

OracleはSunの輝きを永久に奪う(ITmedia)
OracleによるSun買収―アナリストに聞く(4.21)

 アメリカのビジネス社会にとっては当然としても、世界のIT分野にも大きく影響を及ぼしてくるだろう。今後のいくつか気なること、議論されていることなどを挙げてみよう。


企業文化の違い
SunとOracleは、ワークステーション(Solaris)とデータベースの組み合わせで、企業向けシステムの長年パートナーであったとはいえ、企業文化としては大きく異なるようである。Sunの技術文化は誰しも認めるところであろうが、Oracleはその灯を消すのではないかという懸念である。。


MySQLの先行き
昨年、SunがMySQLを買収したときも、MySQLの先行きが懸念されたが、その買収先ごと再び買収されてしまったのだから、MySQL関係者にとっては想定外のことだったろう。一部ではOracleMySQLこそ欲しかったとみる向きもある。少なくとも中小のPCサーバー市場では、MySQLがどんどん伸びているからである。エンタープライズ市場のOracleと中小市場のどちらも得たともいえるが、Oracleに一本化して、MySQLを事実上消滅させるのではないかという懸念もある。そうなれば、1ソフトウェアどころかLAMPなどのオープンソースそのものの灯を消しかねないとまでいう。


OpenOffice.org(StarOffice)の先行き
オープンソースのオフィス・ソフトの中核となっているのが、SunのStarOfficeから発しているOpenOffice.orgである。コミュニティにはSunも関わっている。Microsoft OfficeからOpenOffice.orgに移行している組織もある。IBMLotus SymphonyOpenOffice.orgをベースにしているし、Googleパックには無償のStarOfficeを入れていた(現在は外されている)。OracleOpenOffice.orgをどう扱っていくのか。そもそも、Microsoftと真っ向からぶつかるオフィススウィートを、事業に加えるつもりはあるのだろうか。現状ではエンタープライズ市場の顧客に、Microsoft Officeに代えて、StarOfficeOpenOffice.orgを勧めるとは考えにくい。Sunの顧客でも同様だろう。


Solarisの先行き
インターネット時代になり、PCサーバーが主流となり、Sparcワークステーションの需要が減少していったことが、そもそもSunが身売りに至った根本原因である。そのOSであるSolarisも、OpenSolarisが出ており、PC版もある。Oracleもこれまで独自にLinuxも扱ってきた。これからSparcにしろPCにしろ、Solarisに力を入れるのかどうか。Linuxで十分となれば、Solaris自体も過去のものとなっていく可能性が高い。


オープンソース世界との関係
Sunの技術文化としてはオープンソースに対しての理解が深かったといわれる。OracleMicrosoftと対立している関係とはいえ、オープンソースを推進する企業というイメージは全くない。一般ユーザや開発者には、あまり縁のない存在だったともいえる。Sunを吸収したことから、ますますエンタープライズ市場への特化を強めるのか、あるいはSunのオープンソースの資産やコミュニティとの関係を引き継ぎ、中小の市場へも進出を図るようになるのだろうか。


クラウドへの進出
Sunは4番目か5番目くらいのクラウドベンダーになるかと思われていたが、Oracleはほとんど話題になっていなかったと思われる。資産が巨大化したことで、Sunを軸としてクラウドへの進出は確実になったということになるのか。あるいはエンタープライズ市場への特化を強めることになるのか、これは買収完了後の大きな方向性が見えない限り、何ともいえないところだろう。


 IBMの買収話が破談した後の電撃的な買収が決まってみると、「やはりIBMが買収した方がよかったのではないか」などの意見も聞かれる。しかし、もしIBMが買収したらしたで、また文化の違うIBMのことでの批判もあっただろう。いずれにしても、ITの世界の歴史でも「たられば」は意味がない。技術的に優秀なものが生き残れるとも限らない。今後は、オープンソースに関連する部分は、また分離するとか、変わる新たな互換のオープンソースが出現してくるかもしれない。