完全失業率が過去最悪を更新

 選挙が目前に迫っている日に、完全失業率が過去最悪を更新したことが発表された。完全失業率5.7%、7月の失業者数359万人はなんと1県分の人口に相当するという。「働きたくても仕事がない」という雇用情勢もここまできたかという感がある。もっとも、自分にとっても決して対岸の火事ではない。

完全失業率:最悪更新 予測超す悪化速度 消費減退、悪循環の可能性(毎日.jp)
新型インフルエンザ:1日最大76万人発症 来月下旬ピークか−厚労省試算
新型インフル、日本の感染拡大は流行水準=WHO(ロイター)
労働力調査(基本集計) 平成21年7月分(速報)結果(統計局ホームページ)

 景気が悪くて就職難という時代は過去にも何回かあったが、現在は新卒者ばかりでなく、あらゆる年代に関わる雇用危機である。リストラというのは企業単位の都合での雇用調整だったが、現在は世の中全体の都合で職にあぶれる情勢になっている。いくらハローワークに行っても、これはという仕事は倍率が100倍近くにもなるのだという。それだけ仕事の絶対数がなくなっているわけだ。


 日本だけが不況に陥っていたほぼ10年、次第に景気が回復しつつあったとはいえ、それは「雇用なき景気回復」だろうと思えていた。徹底した合理化と人減らしによって企業自体はなんとか黒字化に向かっただけだった。人件費の合理化のために派遣社員が増えることになった。正規社員の仕事や職種の数が増えたわけではなかった。そうした不安定な状態のときに、金融危機一発でそれも一気に吹き飛んでしまい、景気も雇用も消費も、どん底に落ちてしまったようだ。


 意図的とはいえないが、このタイミングでの完全失業率が過去最悪の発表は、決して政府・与党の選挙情勢に良い影響は与えないだろう。むしろ決定的ダメージを与えるかもしれない。どの党もマニフェストだかキャッチフレーズだかで「生活が第一」とか「生活を守る」などとしているが現状を見渡せば、何か空々しい訴えに聞こえる。経済情勢と雇用がここまできた原因の分析もなく、調子のいいことだけを聞かされても庶民は誰も信用はしないだろう。ムードだけで、官僚が悪い、政治家の誰某が悪い、世襲が悪い、マスコミが悪い、しまいにはそういう政治家を選んだ国民が悪い、という話にまでなる。
 変な全体主義に向かうことも困るが、政党同士が誹謗中傷合戦に近い選挙運動をやっている場合ではない気がする。選挙期間に入ったおかげで、事実上40日以上も国会は空のの政治空白になっているようなものだ。今求められているのは、イデオロギーでも思想でも民族主義でも、ましてや宗教でもなく、経済を立て直すアイデアと実行力を持つ大きな流れだろう。


 政局とは関係はないが、そうこうしているうちに不気味なのは新型インフルエンザが各地に確実に流行していることである。実数は不明だが、こちらも全人口の20%、5人に1人くらいの感染率に迫ってきたら、とんでもないことになりそうだ。どこにも人が集まるようなところに出てはいけなくなるし、学校の学級閉鎖ばかりでなくイベントも自粛や中止が続くことになるそうだ。これも経済を冷え込ませる要因になりかねない。さしあたり人が集まる選挙の投票所に行って大丈夫か、というのも冗談に聞こえなくなる。まさか新型インフルエンザが政局を左右することはないだろうが、こちらも生活を防衛するためには差し迫った事態であることには違いない。さて、明日はとうとう選挙日当日である。