IBMが分子構造の画像化に成功

 IBMが分子構造の画像化に成功し、将来的な分子レベルのコンピュータ・チップの可能性を拓いたという。分子レベルの構造はすでにわかっているはずだから、何が新しいことだったのだろうか。

IBM,分子構造の画像化に成功―半導体の小型化/省電力化への貢献に期待(COMPUTERWORLD.jp)
IBM、未来のコンピュータに向けて分子の「構造」に着目(CNET Japan)
IBM eyes molecule 'anatomy' for future computers(cnet)

 チップの中で本質的な役割をするのが電子の挙動である。分子レベルでは静的な構造はわかっていても、その中で電子がどう移動するかの詳細は必ずしもわかっていない。分子レベルで電子の移動を制御しようとすれば、まずその詳細が視覚化されることなのだろう。電子の効果による構造の変化も画像によって追いかけることができるようになるという。これが分子ベルでの制御、トランジスタとしての制御の可能性がでてくることになるという。すでにペンタセン分子が、トランジスタに応用できる可能性をあるという。


 分子レベルのコンピュータ、チップの可能性ということも、量子コンピュータなどより前の20年以上前くらいから言われていたことだと思う。量子レベルまでいかなくても、ナノテクノロジーの分子レベルでも十分に、現在のメモリなどより莫大な容量の記憶が実現できるとされる。なにしろアボガドロ数レベルのビット数やゲート数になるからである。分子レベルでの電子が制御可能になれば、従来のビットイメージのコンピュータへの応用ができるが、現実的には量子コンピュータよりは実現可能性は高いといえるとだろう。つまり現在のシリコン半導体のコンピュータと量子コンピュータの中間に位置しているのが、分子コンピュータだといえるだろう。ただし半導体物質として、ある程度の分子構造を持つ有機化合物を使うことになるだろう。化学に弱いので、ペンタセン分子とはよくわからないが、ベンゼンをいくつか繋げたような物質だろうか。液晶ではないが、液体物質にレーザー光を当てると大容量の記憶や演算ができてしまうような日がくるのだろうか。