民主圧勝、自民は歴史的大敗

 自民党が歴史的大敗。ある程度予想はされていたものの、実際フタを開けてみるまで、まさかこれほどの落ち込みになるとは投票した方も、ほとんど予想していなかっただろう。結果論的な分析は今日以降、いろいろ出てくることだろうが、その前に思いつくままに書いておこう。

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 選挙用語というかメディア用語というか、よくは知らないがバンドワゴン効果アンダードッグ効果と相反するマスコミによるアナウンス効果がある。バンドワゴン効果は勝ち馬に乗るというもので、優勢が伝えられる候補者や政党に無党派層の支持が傾くというものである。どうせ投票に行くなら、死票にはしたくないという心理的効果である。投票率が伸びると浮動票がムード的に優勢のほうに増幅された投票行動が現れることになる。逆にアンダードッグ効果は、判官びいきというもので、事前にあまりも一方が優勢と報道されてしまうと、実際の投票行動は逆に働き、その結果、選挙前予想と反対の結果になったりするということである。確かに過去にも事前のマスコミ報道の予想が覆った結果に出たこともあった。今回もアンダードッグ効果が出るかと思いきや、大勢は変わらず、浮動票にはバンドワゴン効果もある程度出たというところか。しかしこの不況下にあって、それだけもはや選択の余地がなかったとも言えるかもしれない。


 一般に投票率が上がると浮動票が流れて野党が有利、投票率が低いと組織票がきいてくる与党に有利とされてきた。しかし近年は、必ずしもそう単純ではないようにも思える。1つには時代と世代が変わってきたことがある。昔のように年配者は保守派、若者は革新派という図式も成り立たなくなっている。むしろ若者の方が保守に、年配者の方が革新に期待する傾向さえある。また情報量とそれを得る手段が増えたことである。昔は選挙ポスターと新聞くらいしか事前の選挙情報というものはなかった。テレビでの政見放送を聞いても安っぽいショートコントを聞いているようであった。今では芸能人と変わらないくらいテレビに出まくる政治家も増えた。ネットでもその気になれば候補者に関する情報、ブログ、評価や外聞を知ることもできる。むしろその真偽を考えさせられるくらいである。


 今回の民主党の大勝は、民主党の支持が急速に増えたというよりも、自民党が自ら急速に支持者の離反を招き自滅した結果だったと見えるし、誰しもそう思っていることだろう。自民党に投票する気が失せると、今の小選挙区制ではもう事実上、民主党に投票するしか選択肢がなくなるからである。元々の民主支持層の数はそれほど変わっていなかっただろうが、自民支持から離反した有権者が棄権ではなくて逆側に回ったのならば、その逆風も倍になったということである。


 ここに至るまでいろいろ失態もあったが、政策が大事といいながら、最後まで野党である民主党に対するネガティブキャンペーンばかりやったことが最後の敗因になった気がする。自民支持者が離反しているのに、民主党ネガティブキャンペーンばかりやっても、誰が喜ぶのだろうか。アニメCMなどは知的レベルの低さで、政党助成金をこんなことに使っているのかと腹立だしささえ感じるくらいであった。離反しかかっている有権者を引き戻したいのなら、もっと徹底したポジティブな訴えで勝負をするべきであった。有権者の目を軽く考えているようにしか思えなかった。しかしそういうことさえ見えなくなっているだけ、末期症状であったのかもしれない。


 さて議員の数の上では、ちょうど自民と民主が入れ替わったようなもので、100人は超えたとはいえ、自民党は結党以来の規模縮小の情勢となった。かつての大派閥が並列していたときから比べれば、派閥が1つか2つしかないくらいである。結局は党の衰退を招いたのは数というよりも、政治家の資質がある人材の不足が遠因にあったと思える。その結果、世襲議員の要職ポストのたらい回ししかなかったことになる。世襲が悪いという議論よりも、早い話人材不足であり、有為な人材の出にくい選挙のしくみになっているといえるのだろう。小泉チルドレンといわれた新人議員が一時増えたが、あまり見るべき人材もいなかったのではないか。


 人材という点では民主党も同様で政権与党になった上で当面の問題は、数は増えたが政権担当能力のある人材がどれだけ揃っているかだろう。海外からも早くも注目されているようである。日本人もチェンジによる新しい賭けに出たという期待と不安である。