IT分野側から見た政権交代

 衆議院での民主党の地すべり的勝利により、新政権が発足が現実となるが(それでもまだ半月もある)、何か中傷ばかりだった喧騒も一段落ついて、現実の問題に引き戻されそうである。政権が変わることでいろいろな分野で影響は出てくるだろうが、IT分野から見ればどのような先行きの見通しになるか。政治的イデオロギーには関係のないところで、やや冷静にとらえてみることにしよう。インテルマイクロソフト日本法人のトップの見解が示されている。

民主党の“政権奪取”をインテルとマイクロソフトのトップはどう見たか(COMPUTERWORLD.jp)

「国民主導」というキーワードで見れば、教育、医療、公共分野や地球温暖化に関連する環境分野でのIT分野の取り組みがキーとなることでは、一致しているようである。実はこれらは今に始まった話でなく、金融危機以後、Web 2.0の次に来る技術革新の話とピタリと一致するものである。すなわち教育や医療、社会保障のためのテクノロジを創造することである。これに最近急速に意識が高まっている環境(エコ)が加えられるだろう。すなわちこれらの分野に投資することが、企業にとっても、社会、経済にとっても立ち直りの可能性を持つことになるだろう。


 教育だ、医療費だの社会保障などの財源をどうするかで、バラマキがどうのという議論があるが、財源はダムや道路建設などの従来型の公共事業を一時的に凍結してその分を捻出できるかどうかはわからないが、今、国として上記の分野への積極的な投資を意味することになるのであれば、それは、結果的に次世代のIT分野への投資にも繋がるといえることになるだろう。少なくともIT分野の方はそれを期待しているということになる。関連した製造業分野がまた刺激されることになれば、なお都合のよいことになるだろう。IT音痴な政治による新たなIT政策方針を期待しているわけではなさそうである。森内閣時代には「我が国はIPv6を推進します」のような施政方針演説を初めて聞いたが(おそらく首相は何も理解していなかったと思われる)、もはやそのような国が関与するかのような素振りは必要がないだろう。むしろ今は社会的な規制ばかりが目立ってしまっている。


 問題は教育、医療、環境などのIT分野の技術革新を実現するプレイヤーの存在である。この分野に取り組むベンチャーが新たに生まれてくるか、既存の企業が取り組むようになるのを待つしかないかである。インテルマイクロソフトに取り立てて期待するわけではない。これまで多くのIT分野はベンチャーが先行してきた。やはり今回も新たなベンチャーが登場してきて、IT分野からの経済の活況も生まれてくることを期待したいものである。国民はたとえ貧しても子供には教育を、老人は医療には必ずお金を使うものである。ここを国が手厚くすることは、結果的に関連産業の経済刺激になり、かつIT分野の進歩も引き起こすことになるだろう。環境にしても現在エコをキーワードに産業分野が技術革新を進めているところで、ここにもIT分野が関わりを持っていることも明らかである。総じてIT分野は、もはやそれ自身が主役になる必要はない。むしろ可能性のある多くの分野の土台となって経済の建て直しにつながることになればよいだろう。