eBayがSkypeを売却

 eBaySkypeを売却するという。株式の65%だから完全に売却するわけでないが、事実上事業からは撤退するということである。Skypeそのものが不振というわけでなく、むしろ伸びているはずだが、eBayの本体の事業との相乗効果が得られないからというのが、売却の理由らしい。

米イーベイ、「スカイプ」の株式65%を投資ファンドなどに売却へ(ロイター)
Skype、再び独立企業に―eBayが株式の65%を売却(ITmedia)
「eBay、Skypeを投資会社に売却」の報道
eBay、増収も「Skype評価損」影響で赤字転落(2007.10)
Skype買収―eBayは一体何を考えているのか?(2005.9.15)

 そもそも4年前の2005年秋にeBaySkypeを買収している。このときから「eBayは何を考えているのか」という否定的な意見もあったようである。eBayの本体事業といえば、ネットオークションやe-コマースなどである。世界中で使える決済サービスのPayPalなどもそうで、eBayでの取引と連動している。Skypeを買収した目的は、これらの売り手と買い手のコミュニケーション手段を提供して、取引をスムースにするという相乗効果を狙ったものだったろう。


 しかし思ったとおりには、Skypeとオークションその他との連動は進まなかったようだ。結果、高い買い物をしたということになり、ここに来て手放すことにしたらしい。eBayAmazonと並んで、ネット初期の頃から成功した企業だが、どうも現在のネットサービスを組み合わせて新しいサービスを生み出すことにはうまくはないようだ。VoIPにしろIMにしろ、今まさに旧態の電話をリプレースして本格化しようとしている。ネットの中でも最も適用範囲が広いサービスに見える。それをこの時点で手放すのは、何か時代に逆行しているようにさえ思える。


 しかしGoogleにしろ、Google Waveなる新サービスでSkype潰しではないかといわれるサービスを提案してきている。Skypeはサービスで先行してきて、ユーザ数も莫大だけに、これからどう勝負していくかというところだが、親会社がeBayではなかなか大きな方向性を立てていけない体質になっているのかもしれない。むしろベンチャーのときのようなSkypeのままの方が、新たなサービスに柔軟に対応していけると判断したのかもしれない。


 Skypeの売却先の企業は複数にわたるようだが、興味深いのはその中の投資会社の1つが、あのNetscapeの創設者であるマーク・アンドリーセンの会社であるという。今はスカウトか代理人のような仕事をしているということだろうか。強いて想像すれば、SkypeeBayの関係に、かつてのNetscapeとAOLの関係に似たものを感じる。Netscapeは技術的に優れていたが、AOLの企業体質では結局それを生かすことはできなかった。NetscapeMicrosoftの圧力から逃れるためにAOLに買収されたのだった。Skypeにとっての圧力はGoogleになってくるかもしれない。対抗するのは、まだ海のものとも山のものとも定まっていないGoogle Waveになることが予想されるからである。しかし、これでSkypeにも、今後意外な提携先が出てきて、新たなネットサービスが生まれる可能性もあるかもしれない。アンドリーセンはそうしたことを察知して、Skypeの買取りに出たのかもしれない。