OracleのSun買収に欧州委員会が待った

 海の向こうの企業買収の話でもあり、すでに関心が薄れたことでもあるが、OracleによるSunの買収は最後の段階で足止めを食らっているようである。その結果、買収完了が年明けにもずれ込むからもしれないという。

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 買収発表後、Sunの一部の株主が反対したものの株主総会では承認され、米国司法省による調査も意外にあっさりと打ち切られ承認された。最後に欧州委員会によるクレームがついたようである。その内容とはOracleデータベースとMySQLデータベースの独占に対するものである。買収によってOracleのフリーハンドになるものとして、SolarisJava、そしてMySQLがある。SolarisJavaはもともとSunから発したものであり、それなりの歴史もあり、ある程度の予測もできるが、MySQLに関してはSunが近年買収したばかりのオープンソース企業であり、ネットの世界では独自のポジションにある。そしてOracleプロプライエタリのデータベースと競合する立場になりうるからである。


 もともとOracleデータベースはエンタープライズ市場の製品であり、MySQLは急速に普及してきたWebサービスのベースになるオープンソースデータベースとして、特に中小市場では圧倒的である。その意味では、Oracleは中小市場を持っていかれたMySQLを目の上のたんこぶのように思っていたはずである。いつエンタープライズ市場も侵食してくるとも限らない。MySQL側としては財政基盤を求めるためにオープンソースに理解のあるSunに買収されたのだろうが、そのSunそのものの財政基盤が危うくなり、Oracleの手に渡ることになったわけである。


 したがって今回の買収劇の結果として、Sunの事業の今後というより、MySQLの処遇がネットユーザにとって最も大きな関心事だろう。そして欧州委員会もそこに目を付けたと思われる。MicrosoftGoogleに対してもそうであるように、米国企業の独占に対しては厳しい目を向けるようである。


 今のところ、今後の方向としては憶測しかないようだが、MySQLOracleに掌握されることはオープンソースの精神にとってもよいことであるとは思えない。悪く見れば、MySQLOracleデータベースを売るための手段として成り下がる可能性がある。少なくとも大きな進歩は見込めなくなるかもしれない。プロプライエタリのソフトウェア企業としては当然の態度ではあるだろう。


 欧州委員会のクレームがどれほど効果があるかはわからないが、できればMySQLは再びOracleから切り離されることが望ましいように思える。1企業の意向によって左右されるソフトウェアは、いずれネットの中では受け入れられなくなる可能性が高い。開発者も離れるかもしれない。そうなれば、あるいは新たにMySQL互換のオープンソースデータベースというものが出てくるかもしれない。