Googleが「Data Liberation」を立ち上げ

 Googleが、Webサービスのデータを他社のWebサービスに移転できるようなプロジェクト「Data Liberation」を立ち上げるという。ちなみにliberationとは「解放運動」のことである。Googleはユーザのデータを囲い込みはしない、出入り自由ですよというわけだが、これはネットの中では、どのような意味を持つことになるのだろうか。

Google、他社サービスへのデータ移転を容易にするプロジェクト(INTERNET Watch)
Google、ユーザーデータの完全開放を目指すサイト「Data Liberation」立ち上げ(ITmedia)
The Data Liberation Front

 デスクトップの時代は、アプリケーションのコードもプロプライエタリなら、そこで保存されるデータも独自形式であまり互換性がないのが常識であった。常識だと思わせられてきたのは商業主義に基づくものであり、コンピュータの世界における標準化とは逆を行くものである。オープンソースが優勢になってきて、アプリケーションがプロプライエタリなことは特殊なことになっていき、同時にデータの形式も標準化されてきて当然であり、それがネット上で汎用的なものになっていなければならない。多くはXML形式をベースにするものである。ただ一般ユーザがXML形式の詳細をWebサービスを使う度に意識する必要はないはずである。データ交換がうまくいかないとき、初めてそうしたデータ形式の違いを意識させられて、データ変換ツールを探したり組み込んでこれらの問題に対処しなければならなくなる。実質的にこれらはデスクトップ時代の弊害によるものだとみなしていいだろう。


 さて多くの先端的なWebサービスを提供してきたGoogleだが、同時に同じようなWebサービスも他のサイトでも進歩してきている。問題はこれらのWebサービスを並行して利用したり、乗り換えをしようとするとき、既存のデータがどれだけスムースに移行できるかである。これがデスクトップ時代と同じように縦割りのサービスであれば、Webサービスとしてはむしろ価値も下がることになるだろう。同じネットの中で囲い込みをしても意味がない。同じ目的で、複数のWebサービスが提供されているとき、どのWebサービスを利用するかは全くユーザの自由であるべきである。それは個人の好みばかりの問題ではないからである。たとえばネットならではの、データをリアルタイムでネットで共有しながら作業を進めようとする場合、メンバーが同じWebサービスを利用しているとは限らない。そのような場合、ネット上で容易にデータ移行できるサービスが存在することは非常に合理的である。データを一度ローカルにダウンロードして変換してから、他のWebサービスにアップロードし直すのではない。ネット上のままデータの移行ができるようなものである。さらに言えば、相手がどのようなWebサービスを利用しているのかさえ意識する必要がないことが望ましいだろう。セキュリティは別として、データはWebサービス間を「透過」できるようになればよい。


 このようなWebサービス間での自由なデータの移行は、近い将来的に何を意味することになるかといえば、異なるクラウド間の連携に必要になることだろう。本格的なものはクラウド間でのデータベースの共有だろうが、それ以前にファイルレベルで一方のWebサービスから他方のクラウドWebサービスへとすんなりデータが移行できて処理が可能になることだろう。「ネットは自由」を体現するような「データ解放運動」に注目することにしよう。