YouTubeがテレビ番組を有料配信か

 米国YouTubeがテレビ番組の有料ストリーミングの交渉をしているという。これが実現すると、ネットとテレビの関係も新たな時代に入ることになるかもしれない。

YouTube、テレビ番組の有料ストリーミングについて交渉中か--米報道(CNET Japan)
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 YouTubeの収益化はGoogleにとっても最大の問題である。買収した時点からGoogleにとってもYouTubeにとっても、収益化を目指す選択だったといえるだろう。Google検索のように、またしても広告に頼るだけでは、投稿動画という性格から一筋縄ではいかないものであった。一方、コンテンツ提供の観点からすると、投稿動画は面白さはあるものの、クオリティの差が大きすぎてテレビ番組のようにはいかない。しかしそうこうしているうちに、YouTubeにはホワイトハウス、有名大学の講義ビデオはじめ、公式チャンネルが多く開設されるようになり、社会的ステータスも高まってきたといえる。


 「放送と通信の融合」というお題目は以前から言われてきたことだが、具体的には何をどうするかという話は進んでこなかった。多くは技術的な問題よりも、著作権やスポンサーがらみの関係のためだろう。しかしここに来て機は熟したのかもしれない。テレビ局とYouTube双方にとって有益なビジネスモデルが整ったと判断しているのかもしれない。テレビ局からすれば、YouTubeに番組を提供することによって収益が得られ、YouTubeにとっては有料コンテンツからの収益が得られるとなることである。仮にテレビ局が独自に有料で番組配信しても、サーバーなどの設備の経費がかかる割には収益は出ないだろう。動画配信の膨大な設備を持ち、圧倒的なユーザ数を持つYouTubeだからこそ配信が可能であろう。他の動画サイトでは比較にならない。そしてYouTubeであれば、自国だけでなく世界中に番組が配信可能だということも重要だろう。


 米国でこの契約が実現して、1日遅れでテレビ番組が普通にYouTubeで視聴可能になれば、日本でのテレビとYouTubeの関係も大きく影響を受けることになるだろう。すでにTBSとテレビ朝日がYouTubeに公式チャンネルを開設してニュース番組を配信しているが、ドラマなどの配信には慎重で未定とされていた。これは本家のYouTube/Googleの動向待ちということだったのだろう。しかし今回の話が進めば、民放番組全般が有料でネット配信される時代になるかもしれない。


 ここで民放は無料でテレビを見ることができたのに、ネットでわざわざ有料でと思うかもしれないが、CM抜きでしかもオンデマンドで好きな時間に見られるとなると、これはDVDを購入して見るよりははるかに格安になるということである。音楽がCD/DVDのジャケット単位で買わずに、ネットで1曲単位で買うことに似て、テレビも番組単位で安く買えることになる。


 同じく番組単位で買うといえば、NHKオンデマンドが不評を買っている。同じようだがこれは当然である。もともと受信料を徴収しているのに、さらに有料にしているからであり、二重取りだと言われても仕方がない。だからNHKオンデマンドのビジネスモデルは失敗しているといえるだろう。そして当然ながらNHKサイトではNHKの番組しか見ることができない。しかし民放とYouTubeの提携では、双方に利益が出る可能性はある。ただネットで一般番組を見ることができるようになると、その結果テレビの方の視聴率が下がって、スポンサーにとってはデメリットになる可能性もある。


 国内では2011年以後はデジタルテレビに買い替えをせざるをえない状況になっているが、ただ地上デジタル放送が見られるというだけでは買い替えのメリットは感じられない。それよりもネット配信された動画やテレビ番組をいつでも見られるならば、そちらの方がデジタルテレビを入れるメリットがあることになるようにも思える。


 一方、新聞メディアはネット閲覧の有料化の流れから、Googleニュースからの閲覧に制限をかけようとしている。こちらはなんとなく時代の流れに逆流しているようにも見える。日常的に新聞のニュースは読まなくても、テレビのニュースだけで十分という人が増えれば、新聞メディアはますます生き残りが苦しくなるかもしれない。