2009年のテクノロジー10大ニュース

 今日はIDG News Serviceの選んだ「2009年のテクノロジー10大ニュース」から順不同での話題について、自分なりの論評を加えておこう。

2009年、印象的だった10のニュース(COMPUTERWORLD.jp)
Top 10 technology stories of 2009(COMPUTERWORLD)
年末スペシャル◆2009年アクセスランキング(ITpro)

[1]OracleのSun買収:“業界の巨人”がますます巨大に
昔のSunとかUNIXとかを知る人にとっては、もうワークステーションを頼りにすることはなくなっていても、結構ショックな話題だっただろう。買収といえば、似たようなケースとしてはDECがCompaqに買収されたことだろうか。やはりUNIXでは一世を風靡した企業だったからである。そのCompaqもすでにHPに吸収されている。ワークステーション市場では一人勝ちだったはずのSunですらこうなるのだから、時代の流れを感じさせられる。今後はJavaであるとか、Sunが残した技術の遺伝子がどう受け継がれていくことになるのかが注目されることになるだろう。それがOracleになると思っている人は少ないだろう。現状で一番の問題はMySQLの処遇である。これはそもそも出自がSunの遺伝子でもないだけに、Oracleからフリーになることを望まれているだろう。


[2]Windows 7の発売:やっと新しいOSに移行できる!
やはり取り上げる話題的にはWindows 7になることは避けられないだろう。ただ、これまでのように新しいOSに対する期待というものとは、やや違うようである。「このままXPを使い続けるわけにもいかないから、VistaよりはマシならWindows 7に移行する」という程度のものだろう。Windows 7の新機能だとかの問題ではない。もう、OSだけで何かをするというものではないことは誰でも知っている。ただ多くの人にとって、それしか選択肢がないことも確かである。その選択肢のなさを、あたかも多くあるかのように見せかけるのが各種のエディションによる商法なのだろうか。


[3]Google Chrome OS:裸の王様か、パラダイムシフトか?
1年も前から予告されるものはGoogleとしては珍しい。ネット中心にすべて自前主義になりつつあるGoogleが、とうとうOSにまで手を伸ばしてきたといえるのがChrome OSである。OSのラインアップに加わるというより、すべてのアプリケーションをWebアプリにしてしまうという方向を明確にしたものといえる。これをパラダイムシフトとするならば、その流れは変わらないだろう。現状ではリソースや周辺機器を最小限にするネットブックが最もそれに向いているといえる。ただChrome OSに特化したようなネットブックが出現してくるかどうか、Android携帯の出現と似たような状況といえるかもしれない。


[4]Yahoo!とMicrosoftの提携:Yahoo!検索に未来はあるか?
Google検索に対抗というより、Googleの検索広告市場の独占に歯止めをかけたいMicrosoftが検索市場2位のYahoo!を買収しようとしたことが始まりだった。結果的にYahoo!側に拒否され、そのうちに金融危機が起こり買収どころでもなくなり、Yahoo!Microsoftも業績を落とすことになる。買収基金を開発に回した?か、独自にBingでGoogle検索に対抗しようとYahoo!と検索部門だけの提携にこぎつけた。果たして2位、3位連合でどこまで1位に迫れるかである。Bingは公開当初はそれなりに評判もよく、シェアもある程度伸びたようだが、現在はどうか。検索結果がそれほどGoogleと変わるわけでもないということで、Google検索に慣れているユーザを奪うところまでは行っていないのが現実かもしれない。


[5]「ガバメント2.0」:景気刺激策にITを盛り込んだオバマ政権
Web 2.0の成果を最も効果的に政治に取り入れたのがオバマ政権といえるだろうか。誰でも使っているインターネットにホワイトハウスからの情報を双方向で積極的に流すことによって、開かれた政治という印象を大衆に持たせようとしていることは成功していると見えるし、他国にも影響を与えていると思える。ただ世界的不況を、ITの力を加えて克服できるところまで行くことができるかどうか。もっとも、それは米国だけの話ではない。


[6]Appleジョブズ氏、再びカムバック
iPhoneのヒットもあり、過去最高の利益を挙げたAppleにとっての弱点といえば、ジョブズの健康問題ともいえるかもしれない。MacintoshWindowsに押されてシェアが落ち、Newtonの失敗もあった頃、一度Appleを追放されたジョブズがカムバックしてからのAppleの復活も見事だった。Sunと並ぶワークステーションだったNeXTを作り、そのOSのNEXTSTEPの系譜は今だにMacOS Xに生き続けている。今ではそのSunさえも買収の憂き目にあっているが、Appleジョブズは生き残っている。同じ世代でまだ第一線で残っているのはジョブズだけかもしれない。ただそれがいつまで続くか、いつ後継者に政権移譲がなされることになるのかが注目されるところだろう。


[7]マイクロブログ革命:抗議行動を世界に発信したTwitter
政治とTwitter、これは今年の大きな傾向だったといえる。Twitterだけでなく、インターネットそのものが世界中の人々の生活や活動にとって必須のものとなり、それだけ影響力がますます大きくなったといえるからだろう。そうした背景が出来上がっていたところに、ポッと現れたTwitterにまたたくまにいろいろな人が飛びついたという結果にも見える。


[8]Intel独禁法問題:EUからの制裁金、AMDとの和解など
CPUといえばIntelがいつしか独占となっている。PCばかりでなく、PowerPCを搭載していたMacintoshIntel CPUになるし、SPARCプロセッサを搭載していたワークステーション市場も制圧してしまったことが、Sunの業績が落ちていき買収につながったともいえる。そのIntelの互換CPUとして、ずっとIntelを追いかけ続けてきたのがAMDである。以前はIntel互換CPUメーカーは他にもあったが、今残っているのはAMDだけである。IntelにとってはAMDだけでなく、独禁法と各国での訴訟も相手にしなければならない。MicrosoftGoogleなどとと同様に「金持ち、けんかもする」というところだろうか。


[9]スマートフォン戦争激化:Androidフォンも参戦
スマートフォンはOSでみれば、iPhoneAndroidが主流になっていくかもしれない。AppleだけのiPhoneオープンソースだけにその他のメーカーによるAndroidフォンという構図になるかもしれない。独自OSの路線は複数は生き残らないことは歴史の証明するところである。日本の携帯キャリアとしてもAppleに膨大な上納金を払うよりは、Android搭載で参戦する方が可能性があるということになるだろう。


[10]2010年の業界天気予報:雲間から日が射す可能性も
タイトルの和訳からは、クラウドが不況からの回復の役割をしそうということなのかと思えたがそうではなく、"IT forecast:Clearing, with a chance of sun"とのことである。「ITの見通し:晴れ間が見えるかも」くらいであろうか。IT業界単独というより、他の業界がITとの連携によって回復に向かうかどうかが大きいように思える。エコカーの開発に向けての自動車産業とITとの結びつきもその典型かもしれない。ITといっても、少なくとも国内では、復活予算が認められそうなスーパーコンピュータ開発がその牽引車となることはないだろう。