WindowsおよびOfficeのレンタル提供ライセンスとは

 Microsoftは、ネットカフェやホテルなどでWindowsやOfficeがインストールされたPCを時間貸しサービスを行うためのレンタル提供用のライセンスを発表した。ライセンスの内容の詳細については、あまりまじめに調べる気にはなれないが、これまでのPCを他人に貸すような行為は有償であれ無償であれ、Microsoft的には厳密には違法であったということになる。しかし、そこはMicrosoftの「寛大さ」のおかげで、大目に見られてきたということらしい。

マイクロソフト、WindowsおよびOfficeのレンタル提供ライセンスを発表(CNET Japan)
Microsoft、ネットカフェなどプロバイダー向けライセンスプログラムを発表(ITmedia)

 そもそもソフトウェアそのものを売るのではなく、その使用権であるライセンスを売るという考え方を編み出したのが、Microsoftがソフトウェアで独占的に利益を得ることになった要因であった。しかし、もともとそこには矛盾や判断が困難な場面を内包しているものでもあった。スタンドアロンで利用しているときですら、PC1台に1ライセンスなのか、1ユーザに1ライセンスなのか判断できない場面もあったし、ネット時代になってサーバーソフトをクラアントがシェアして使う形になって、余計に混乱したというか、もうライセンスという考え方が破綻していたように思う。そこにLinuxを中心とするオープンソース化の流れがあり、理不尽なライセンス管理に頭を痛めるよりはオープンソースに転向してしまった方がよほどスッキリすることになった覚えがある。


 ネットカフェやホテルのロビーなどでPCを貸し出すような場合、ソフトウェアの購入とは別に、さらにレンタル提供ライセンス料を支払えということである。そればかりでなく、たとえばどこかの会場に話に出かけて、その場でPowerPointの入ったPCをプレゼンのために使わせてもらうような場合、そのような備え付けPCにも、やはりレンタル提供ライセンスが必要なのではないかと思える。以前、ある市民講座の実習の講師を引き受けたことがあったが、学校のPC教室などを借りて行おうとすると、学校のPCには通常アカデミックライセンスのWindowsやOfficeがインストールされているから、それらは生徒ではない一般市民に貸してはいけないということになる。そのためMicrosoftに訴えられないようにと、市民講座直前になって慌てて受講者の人数分だけ通常ライセンスのソフトを購入した市や学校もあった。もちろんわざわざインストールし直したわけでなく、買っておいただけなのである。


 サーバーライセンスに至っては、LANの中でクライアントPCの物理的接続数なのか、同時アクセス数なのかも問題になる。いずれにしても接続数が増えると、その分だけクライアントライセンスを買い足さなければならなかった。Windows NT時代にライセンス管理者として稟議書を出して、実際に購入したこともあった。ソフトウェアのパッケージと同じ箱がいくつか届いたのだが、入っていたのはランセンス証書の紙だけで情けない思いをしたものである。何か「ペーパー商法」という言葉が頭に浮かんだ。こうした経験からLinuxがサーバーとして実用的になってきた頃には、Windowsサーバーは捨てることに繋がったのである。どうしても必要な場合には、Sambaで代用すればよかった。皮肉なことに、Microsoftのライセンスの理不尽さが、Linuxサーバーの推進に繋がったともいえるのである。


 現在はクライアントのWindowsとOfficeのライセンスだけが問題として残っている。ネットブックのようなハードウェアの価格がはるかに小さくなると、Officeの導入そのものが価格バランス的に不自然になってくる。また貸出しにもライセンス料がかかることになる。OfficeではなくてOpenOffice.orgを利用すればというのはいつでもある議論だが、2010年はそれこそ一時的貸出しにはOffice Web Appsの利用でよいではないかという気がする。一時的貸出しにはそれほど高度な機能を利用するとは思えないし、もしその必要があるような人はわざわざ借りずに自分のPCを持参するだろう。そう考えると、新しいレンタル提供ライセンスとは、事業者に対しての新しい税金の導入と同じようなものではないかとも思えてくる。