Googleが中国から撤退の可能性

 一般のニュースにもなり、やや驚かされたのがGoogleが中国から撤退するかもしれないという報道である。世界の人権擁護派のGmailユーザーへの不正攻撃が原因だという。単なるセキュリティに関連する事件なのであれば技術的対策で済むことなのだろうが、問題の本質はどうもそうでないということが確信されたからだ、ということらしい。

Google、中国事業閉鎖の可能性 言論の自由の問題めぐり(ITmedia)
グーグル、中国での検索結果検閲を廃止へ--同国から撤退の可能性も(CNET Japan)
米グーグル、中国撤退をめぐりトップの意見が衝突(WSJ日本語版)

 この1年ほどは、ネットと社会の関わりという以上に、オバマ政権誕生からネットと政治家が直接結びついてきたように思えるが、国家レベルとの関係にまでなってきたことを象徴する事件かもしれない。イランの混乱時にtwitterが大きな役割を果たし、その報復のためか、twitterが攻撃されたこともそうである。ネットが情報のオープン化を推し進めることは、情報公開に対して閉鎖的な国家とは相反することになる。かつて、テレビによる情報のオープン化によって、ベルリンの壁の崩壊に繋がったことは歴史の教えるところである。


 またセキュリティ問題に関しても単なる技術論やポリシーの問題ではなくて、防衛も攻撃も国家レベルでの関わりをもつことになると、もはや1企業の判断でどうにかするような問題でもなくなる。GoogleMicrosoftといった企業は、ただでさえ法律も習慣も異なる世界中の国々ごとにそれに合わせながら事業展開しているわけだが、攻撃のターゲットにされて逆の意味で政治利用をされるのではたまったものではないだろう。


 「インターネットは民主主義の道具」という言葉は、今はそのGoogleに籍を置くインターネットの父・ビント・サーフの言葉だったと思うが、たとえ話としてではなく、文字通り民主主義のための戦いの場とされてきているように見える。