米IBMがFirefoxを全社員のデフォルトブラウザに

 米IBMが自社社員のデフォルトブラウザにFirefoxを採用することにしたという。特にどうという話でもないようだが、IBMクラウド戦略の一端が見えるようにも思える。

米IBMがFirefoxを全社員のデフォルトブラウザーに採用(INTERNET Watch)
IBM、「Firefox」を社内の標準ブラウザとして選択(CNET Japan)

 ネット時代以前の企業同士の対立関係は、時代の流れとともにいまや無くなったかうやむやになっている。ケースバイケースでライバルである場面と、提携するところでは提携する多面的な状況となっている。かつてはコンピュータの巨人・IBMに、その他のIBM互換機メーカー連合が挑むという単純な図式だったが、IBMはPCの製造・販売はLenovoに売却したし、かつてのOS/2のような自社のOSもなくなった。IBMは企業サポート専門の企業になったという感じである。企業サポートができるならば、極端な話、ハードもソフトもネットも自社製品である必要もないわけである。最適と判断するハードやソフトを組み合わせればよいだけである。


 IBMソフトウェアで近年聞いたものといえば、Lotus NotesDB2Lotus Symphonyくらいだろうか。いずれも企業導入を意識したもので、オープンソースになったものでも、あまり個人利用のイメージはない。そうそう、ホームページビルダーはあったか。肝心のOSはWindowsだったり、Redhatだったり、Solarisであったりするかもしれない。


 そして現在はサポートする企業にIBMパブリッククラウドへの移行と、インフラを持つ企業にはプライベートクラウドの構築をサポートするようになったのだろう。いずれにしてもクラウドにアクセスするのに重要なのはOSよりもブラウザである。そのIBMとしての基準を示したのが今回のFirefoxの採用であるだろう。よくよく考えてみれば、ソフトウェアが優秀という以前に、自前のブラウザを持たないIBMとしてはFirefoxしか選択肢はなかったようにも思える。IEMicrosoftとはかつてはOSで、これからはWindows Azureクラウドでライバルになるし、SafariAppleとはかつてのPCでのライバルでもあるし、かといってChromeGoogleクラウド分野での真っ向のライバルである。シェアの少ないOperaというわけにもいかないだろうから、特定の企業の色が付いていないシェア2位のFirefoxがベストだということになる。IBMクラウド用標準ブラウザに認定したというわけである。


 自社内をFirefoxで固めるということは、顧客企業にも薦めるということになるだろう。それによってFirefoxの今後のシェアに影響するかどうかはわからないが、クラウドにはFirefoxのパターンは強まるかもしれない。どちらかといえば企業内では、これまではWindowsのデフォルトのままIEを使い続けているケースが多かったからである。他のブラウザをイントールすることは、なんとなく単なる「好み」だけのように見られがちだった。そうした意識が変わるかどうかである。それは現在GoogleがスポンサーになっているFirefoxの将来の存続にも影響するかもしれない。2011年までが契約があったはずだが、仮にChromeを持つGoogleがその後スポンサーを降りたりすれば、IBMが乗り出すかもしれない。