日本人のプライバシー侵害のリスクの認識

 またしても日本人のセキュリティ意識を問題とする調査結果が出ている。セキュリティ一般というより、ネットによるプライバシー侵害の意識のことを問題としている。個人情報とプライバシーはまた微妙に異なることなので、「個人の行動がネットを通じて知られること」への注意とでも言った方がよいだろうか。

日本人はプライバシー侵害のリスクを認識するもEUより低い(CNET Japan)
インターネット上のサービスにおけるプライバシについての調査結果を公開(IPA)

 EUとの結果を比較したというのだが、昔ながらの「日本は欧米よりも◯◯の意識が遅れている・・」という問題意識そのものもどうにかならないのだろうか。日本が先進国と認められるには、何事も欧米と横並びでなければならない、という発想そのものが古臭いような気がしてならない。たとえば「日本はアジアの中では意識が進んでいる」などという設定も可能なはずである(もちろんさほど意味のあることとは思わないが)。


 ネットの存在とは無関係に、EUの人は自分のプライバシーに対して敏感であるという事実があるとすれば、それは文化論の話であろう。日本人に比べれば、もともとプライベートな時間を大事にする傾向がある。「家族との時間が仕事よりも大事」と考えるか、日本人のように仕事を第一と考えるかである。ある意味、プライベートなことに対して重きを置かないせいか、鷹揚であるのかもしれない。また単一民族国家のせいか、自分も他人もプライベートは似たようなものだし互いに詮索しても意味がないと思い込んでいるところもあるのかもしれない。


 それはともかく、ネット上でプライバシーを守ろうとするには何をすればよいのかという問題である。プライバシー侵害の被害を受けないようにするために、ブラウザのセキュリティ設定などを厳しくするなどの「技術的対策」のことを問題としている。しかしプライバシーの防衛は、そのような表面的なことではないだろう。たとえばSNSに「足跡」機能があるが、自分はこれが大嫌いで、そもそもそのような機能がオフにできないようなサイトには近づかない。あるサイトへの誘導のログが残るようなリンクは踏まないなどの意識をしている。これはプライバシー意識というより、行動意識の問題である。誰でも知っている大きな道路ばかりを堂々と歩きたいか、あまり人が通らないような道を探しながら目的地に行きたいかなどの違いである。


 君子危うきに近寄らずが一番よいプライバシーの防衛方法だが、何もせずとも一方的なプライバシー侵害に近い問題もある。Googleストリートビューなどである。公道に面している場所を歩いていたりするのは、プライバシーでもなんでもないといってしまえばそれまでかもしれない。ネットで何か公開していれば、それが元で、自分の意図しないところで意図しないものが勝手に公開されているかもしれない。2ちゃんねるや、最近ではtwitterなどにアップされたりリンクされているかもしれない。それを個人の意識が低いからという切り方だけでは、乱暴のような気もする。ネットに参加しないのが一番安全であるが、そうもいかないだろう。ネットに参加する以上は、プライバシー侵害のリスクも当然負うことになるという自己責任の意識付けは必要であろう。ただそれを防衛するには、「技術」はほんの一部の手段に過ぎないことは知るべきであろう。