Android タブレットか Chrome タブレットか

 iPadを追撃するタブレットPCの本命がまだ見えてこない現状で、Chrome OSをベースにしたタブレットPCが11月に発売されるという噂がある。iPhoneからiPadの流れに対抗するものと見るならば、Androidタブレットが自然な気がするが、Googleにはいまだに正式には登場していないネットブック用とされるChrome OSがある。実際にこれらの並立は頭の痛い問題なのではないか。

「Chrome OS」搭載タブレット、2010年11月に発売のうわさ(CNET Japan)
Google、ゲームにフォーカスした「Chrome Web Store」を10月に開設へ(ITmedia)

 ネットブックが2年ほど前からブームとなり、結果的にノートPC市場を大きく変えることになった。価格面では、いわばノートPC市場のデフレ化を進めてしまったともいえる。そこでは本来ネットブック用OSとしては重すぎるWindowsを「押し込んだ」ことが原因でもあった。それに対して、ネットブックの特性を活かす専用OSがChrome OSだったはずである。発表から1年以上経過したが、いまだに正式なものはリリースされていない(開発版をVMwareでインストールできるのみ)。つまりOSとしては、まだ何の実績もないものである。


 この1年のうち、いや半年のうちに大きく変わったのは、iPad登場によるタブレットPCへのシフトである。iPadを追撃すべく、多くのメーカーから新たなタブレットPC登場が予告されている。スマートフォンからの流れでそれはAndroidタブレットが主であろうと思われている。しかしGoogleにとっては、これは少なからぬ誤算ではなかったか。GoogleとしてはスマートフォンAndroidネットブックなどのモバイルPCにはChrome OSとしたかったはずである。ところが、まさにその中間のカテゴリーに存在するようなタブレットPCへの対応は、AndroidChrome OSかで悩むことになりそうである。もともとChrome OSが発表された当時からAndroidとの棲み分けはどうなるのかという議論はあった。Androidを搭載したネットブックというものさえ一部では出荷されていた。将来的には統合もありうるかもしれないなどという予測もあった。しかしタブレットPCが主流になりそうな現状で、搭載OSすらはっきりと決まっていないのでは、そんなにのんびりとしたことを言っていられる状況ではない。はっきり言って、Chrome OSは登場のタイミングを逸したのではないかとさえ思える。


 どちらかといえばGoogle自身はChrome OSをタブレットPCに採用したいのではないだろうか。しかしChrome OSはもともとネットブック用に設計されたものである。今後ネットブックタブレットPCの市場の大きさを考えれば、Chrome OSをタブレットPC用OSへとコンセプトと設計変更をしていかなければならない。Androidの方ははすでにスマートフォンで実績がある。ハードウェアメーカーとしては、実績のあるAndroidを採用しようとするのは当然である。このままではChrome OSは、タブレットPCにも強引に「押し込め」ようとするWindows 7と、さほと立場的に変わらないことになるかもしれない。


 Chrome OSタブレットに関して一様に関係者の口が重いのは、サプライズを狙ってのことではなく、複雑な事情であることを物語っているのではないだろうか。