IntelがMcAfeeを買収

 IT企業の大型買収はもはや驚くことでもないが、この買収はやや意外な感じがした。CPUメーカーのIntelが大手セキュリティソフトベンダーのMcAfeeを買収したからである。ハードウェアとソフトウェアの対極のものを製造しているメーカー同士のように見えるからである。しかし現在のセキュリティ環境を考えてみれば、意義のある買収なのだろう。

Intel、セキュリティ大手McAfeeを76億8000万ドルで買収(ITmedia)
IntelのMcAfee買収、その意味は
IntelのMcAfee買収に一部アナリストは疑念も

 一瞬、MicrosoftのSecurity Essentialsのせいで、セキィリティソフトベンダーの一角であるMcAfeeが傾きだしたかと思ったが、そうではなくIntelの戦略が垣間見えることであるようだ。PCに限ってCPUとセキュリティソフトを考えれば、せいぜい実行のパフォーマンスくらいであまり繋がりはないように思える。しかしIntelとしても、少数のCPUメーカーとのCPU価格の叩き合い合戦の時代ではなくなっている。

 
 PCばかりでなく、今やモバイルを含む様々な組み込み機器、デバイスにもCPUは組み込まれている。そしてこれらのあらゆる機器にもセキュリティが重要になっている。PCと異なり、ひとたび設置されれば当分は固定されることになるだけに、初めに組み込まれているセキュリティ機能が重要である。最近の周辺機器では初めから「セキュリティ付き」を売りにしているものも多くなった。ネットワーク機器でいえば、モデムやルータがこれに当たる。サーバーやクライアントPCにばかりセキュリティを依存するのではなく、経路に存在すうるこれらの機器が、ファイアウォールだけではないセキュリティの関所の役割を果たすようになってきている。セキュリティ機能はもはやデフォルトの組込み機能である。


 Intel製のハードウェア機器を製造するとき、ハードウェア組込みとファームウェアの中にMcAfee製のセキュリティ機能が初めから組み込まれることになるだろう。Intelとしてはセキュリティ機能の信頼性を武器に、CiscoなどISPや企業向けのネットワーク機器への対抗を目論むことになる。そしてそれはクラウドの基盤を押さえることになるだろう。そこではデバイスレベルからのセキュリティが必然の世界になってくる。もちろんこれはユーザは意識しなくてもすむ部分の話である。