Winnyに複数の脆弱性、利用停止呼びかけ

一般にはP2Pソフトだが、日本では最も物議を醸したのはWinneyであるといえよう。現在、複数の脆弱性が見つかり、開発者も例の裁判で対策予定も立たないために、セキュリティ関連団体としては利用しないように呼びかけるという。

「Winny」に複数の脆弱性--対策予定なく、利用停止呼びかける(CNET Japan)

 Winneyは以前から、まず利用することもなかったので、利用停止の呼びかけにも、そんなものだろうなくらいの感覚しかないが、すでに一時代前のソフトウェアという認識しかない。Winnyそのものは変わっていないだろうが、周囲の環境が技術的にも社会的にも大きく変わっているからである。Winneyの利用目的はともかく、最近のIE6と同じで、もはやサポートされないのだから危険なので利用しないように呼びかけるということらしい。


 Winny裁判というと、「著作権侵害」の幇助に当たるかということであった。開発者自身が著作権侵害をしているわけではない。ソフトを利用している一部の人が著作権侵害したからといって、開発者がその幇助に当たるかという、やや滑稽な内容である。包丁を振り回す傷害事件があったから包丁を作った人が逮捕されるというようなものであった。P2Pソフトは登場の初めの頃から、音楽コンテンツなどの違法ダウンロードが問題になっていた。米国でも論争があり、学術的にP2Pソフトの重要性を説く賛成派と、著作権のみならず違法ポルノコンテンツの流通を懸念する反対派と真っ二つに分かれていた。現在はその議論がどうなったのかは知らないが、その後セキュリティの情勢が大きく変わった。


 P2PソフトやWinneyが登場した頃は、まだセキュリティ意識が高くなかった頃である。著作権だ、違法ポルノだ、とやっている以上のことが起こった。Winneyを介したPCのマルウェア感染、個人情報、機密情報の大量流出である。こちらの方が被害内容によっては、社会的にはるかに大きな事件であったからである。Winneyはマルウェアの温床のようになってしまった。事件が起こるたびに「Winneyは使うな」の警告だらけである。それでも麻薬のように人間の欲望は抑えきれないのか、再び誰かが事件を起こすという繰り返しの時期もあった。


 そういう警告の効果もあってか、現在ではWinnyやShareなどの訳ありソフトの利用者は減少しているようである。しかしそれ以上に周囲のネット環境が大きく変わってきたからだともいえよう。P2Pはサーバーに頼らないプライベートなファイル交換を可能としたが、現在は大容量のパブリックのストレージサービスが普及している。本来の意味でのファイル交換であるならば、いくらでも方法はある。音楽配信にかぎってみても、iPod-iTunesのようなダウンロード配信が当たり前になっている。動画を捜したければYouTubeのようなサイトを見つけることができる。少なくとも不特定多数を相手にしたコンテンツ交換に、P2Pソフトを使う場面は少なくなった。残ったのは事件による「負のイメージ」だけである。


 ここにきて脆弱性を解消できないセキュリティ上の理由から、今さらの利用停止を呼びかけるとのことだが、すでに過去のソフトウェアになりつつあるので、脆弱性が存在するのも当然とも思える。ただP2Pソフトの技術そのものは有用なものである。