Amazon「Kindle Fire」への期待が高まる

 Amazonの「Kindle Fire」の下馬評が高まりつつある。秋に発売、米国発だが年末商戦で一気に人気が爆発する可能性がある。Amazonだけに一過性のブームでは終わらないかもしれない。

「Kindle Fire」は年末商戦の一番人気に..(ITmedia)

 iPadに次ぐタブレットPCには何が来るのか、特にAndroid陣営にとっては、どれもドングリの背比べのようなものであった。HPのPalmOSをベースにしたタブレットにはやや期待していたが、早々と打ち切り、それどころかタブレット、スマートフォンからの撤退、PC事業そのものも分離する方向にまでなってしまった。iPadが強すぎるというのも一因だろうが、もはやハードウェアやOSだけを売りにするという方向性には、これだけPC全体が安価になっている時代には限界がきていることを示すものだろう。


 タブレットに重要なものはコンセプトであると思われる。スマートフォンはもともと携帯電話の拡張であるからコンセプトははっきりしている。ところがタブレットは、iPad登場の当初は電子書籍リーダーという見方だったが、Androidタブレットも登場するにつれて、次第にノートPCの代替としてのコンセプトが期待されるようになる。確かにメールやブラウジングその他のライトなPCの活用の代替には十分なりうるだろうが、過度なPC代替への期待は次第に不満を呼ぶことになってくる。Windowsタブレットに至っては、まさにPCのWindowsと同じ能力を期待し失望させられることになる。実はこれでは、数年前にネットブックがたどって衰退した道と同じことになる。


 そこにAmazonの「Kindle Fire」は、タブレットを再び電子書籍中心のコンセプトに引き戻すことになるかもしれない。Kindleとは、もともとiPadより早くからある電子書籍リーダーだからである。そのコンセプトははっきりしている。ハードウェアやAndroidがというより、膨大なAmazonの持つコンテンツを活かすものだからである。高齢者を含めPCをやらない人はいるが、本を読まない人はいない。ただその方法は広がるに越したことはない。すでにタブレットを所有する人でも2台目として「Kindle Fire」とする人も、あらためて電子書籍リーダーとしての活用を期待しているのかもしれない。もちろん価格も魅力ではある。


 問題は日本国内の市場である。年末にすぐにブームが起きるとは考えにくい。それは国内での電子書籍市場が停滞しているからである。大手出版社や書店などの電子書籍に対する思惑が大きい。しかし米国で火が点けば、それが外圧のようになって国内でも電子書籍の流通が加速していく可能性はある。そこにiPadKindle Fireかの競争も生まれるかもしれない。