Firefoxが欧州でさらにシェア伸ばす

 ちょっと前に取り上げた、またFirefoxのシェアの話特に欧州でのシェアが際立っているようで、さらに上昇して、28%近くまで伸びているという。

Firefox、欧州でシェア27.8%を獲得 (CNET Japan)

欧米か? と日本やアジアとでは、ネットは世界で共通とはいっても、いろいろ状況が異なっていることから、結果的にブラウザに対する支持率にも反映されてくるのだろう。


 IEにしろFierfoxにしろ、米国発のソフトウェアには違いないから、発祥の地である米国ではIEの開発元でもあるMicrosoftの影響が大きくて、それほど急激にFirefoxIEのシェアを侵食もできないだろう。

 日本をはじめ他の国では、ユーザの強力さが問題になるように思う。ただのマニア受けとかMicrosoft嫌いのユーザの支持だけでは、強力な推進力にはならない。
 では、東欧に近い欧州ではどうなのかは、やや不思議である。どうもユーザによるサポートネットワークが強いのが理由らしい。歴史的に築かれてきた社会の体制が影響しているようにも思える。日本のような格差社会にもなっていないから、横のつながりのネットワークの協力がえられやすいのかもしれない。またそういうネットワークにとって、Mozillaのようなオープンソースソフトウェアを支える団体に対しては、好意的になれるのかもしれない。そこはMicrosoftが掌握できない世界なのかもしれない。


 ブラウザとは関係ないが、欧州発のSUSE Linuxを米国のNovellが買収し、さらにかつてWindowsネットワークをめぐってライバル同士だったMicrosoftと提携している。米国ではLinuxWindowsの敵でしかないが、異なる文化の欧州に入り込むには欧州発のSUSEと組む方が得策と判断したのだろう。
 ところがこのことが、Linuxオープンソースの世界の中では、Microsoft有償と無償の矛盾した立場に立たせていることになっているようだ。現実的には二枚舌を使い分けているのだろう。


 IEのシェアが落ちてきても、今はMicrosoftにとってはVistaの売り上げを伸ばすことが当面の課題であろうから、あまり目くじらを立てていないようにも見える。
 ところが、今まさに続々とWebによるネットサービスが出現してきて、ほとんどのことがWebだけで足りるような時代になってきた。PCを起動して、しばらくはOSのわけのわからないメッセージをやり過ごして、ネットに無事接続され、ブラウザさえ起動できれば、あとはPCのソフトのことなど忘れてもよい。OSのことなど気にしなくてもいい。あえて言えば、FirefoxはどのOSからでも同じような画面とメニューで利用できるが、IEWindowsの中でしか使えない。この差は大きい。

 OSはプラットフォームであるという言い方をするならば、次の時代のプラットフォームはOSではなくブラウザである。Firefoxの伸びは着々と次世代のプラットフォームの地位を確立しているように見える。当然、IEFirefoxに負けじと同じような機能を搭載してくるだろうが、それもWindowsの中だけの話に過ぎない。逆にMacLinuxを使う人が、IEの先端的機能を使いたいためにWindowsに乗り換えた、などということは、とてもありえそうにない。


 Microsoftも今後Webアプリのサービスにシフトしていくという。時代の流れである。しかしそうなれば、ますますWindowsIEを使う必要性がなくなっていく。まさかWindowsIEを使っていない人へのWebサービスはできません、というわけにもいかないだろう。
 Webサービスの中核技術になったAjaxにもIE 7は慌てて対応した形だ。目の敵のGoogleが広めた技術の対応に追われることになるとは、ブラウザでは少なくともこうした対応では、Firefoxが勝利を収めていると思える。


 懐古趣味的だが、こういう結果を導いたのは、かつてのブラウザ戦争の Netscape vs IE のとき、IEWindowsバンドルによる無償?バラマキに遭って、瀕死の状態になったNetscapeが身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、とばかりにオープンソース化したことであると思う。それによって生まれたのが、Mozillaプロジェクトであり、Firefoxが生まれることになった経緯である。

 Netscapeは事実上死んだが、その遺伝子から不死鳥のように蘇ったのがFirefoxだったと思っている。そういう意味では、Firefox というより Phoenix と呼ぶべきであろうか。