量子コンピュータの量子ビット間の通信

 IT mediaは量子コンピュータの記事が好きのようで、しばしば新たな研究の進歩の話がある。果たして実用に足る量子コンピュータが発明されるのは、いつの日になるのかは見当もつかないが、コンピュータの未来に夢を与えるテーマであることは確かなようだ。

量子コンピュータへ前進、離れた量子ビット間での通信を実現(ITmedia)

 若いときに物理をかじっているので、なんとなく理解はできるのだが、普通に考えればなぜ離れた量子ビットが通信できてしまうのかは不思議ではあるだろう。それこそ量子の世界の中の話だからといえそうだ。電子以下のレベルの話では、あまり距離的に近いとか、移動の軌跡などは意味をなさない。それどころか同じ場所に2つ以上の電子がいれば、相互に区別することさえ無意味になる。
 意味があるのは電子のエネルギーの準位とスピンの向きだけだ。それも排他律とかで、とびとびの同じエネルギー準位と同じスピンの向きを同時に持つ電子は存在しえないので、席取り競争みたいに低いエネルギー準位を持つ電子から区別されていく。これは電子同士が通信できることに相当している。似たような話としては、超伝導現象の本質であるクーパー対という電子間ペアがある。


 注意するのは、このとき電子同士は同じ作用が働く領域にいるというだけで、物理的距離にはいっさい関係のない話だ。「なぜ距離的に遠くにいる他の電子とエネルギー準位やスピンが認識できるのか?」という素朴な疑問が湧くが、それが量子の世界であるとしかいいようがない。それを外部から知ろうとしても、観測のためにエネルギー準位を乱すことになるので、決して元の状態ではなくなる。このジレンマが不確定性原理である。


 しかし、このことを逆用すれば、物理的距離に関係なく、エネルギー準位やスピンによる通信ができることになる量子コンピュータに応用していることは、こういう解釈でよいのだろうか?