テレポーション型量子計算を実証

 しばしば量子コンピュータの突破口となるかという研究の試みが話題になる。現実的には理論と実験ともに、実現可能性を徐々に増しているように思える。今回はNTTと大阪大のグループがテレポーション型量子計算なる実験に成功したとのことである。

NTTと大阪大学、テレポーテーション型量子計算を世界で初めて実証 (Robot Watch)
世界初、テレポーテーション型の量子計算を実証 (NTT資料)
テレポーテーション型量子計算を世界初実証 NTTと阪大 (ITmedia)

 一般記事だけから内容を理解できる人はどれだけいるのかわからないが、口頭発表の資料は掲載されている。これから大雑把に内容を推測してみよう。


 量子コンピュータの実現に必要なものは、量子力学の原理を利用した量子ビットの実現である。古典的ビットでは入力も出力も0,1に確定するが、量子ビットではそうはいかない。いわゆる不確定性原理があるからである。ところがこれを逆用すれば、離れた量子ビット間での高速演算が可能になる。問題はいかに量子状態を壊さずに出力結果を得るかということである。特に演算としては、2つの出力を反転させる制御NOTゲートの実現が困難であるということのようである。直接関係はないかもしれないが、実際半導体の素子でも、論理的にはANDやORではあるが、実際にはNANDとNORゲートとNOTゲートでその論理を実現している。その類推で考えれば、量子ビットでもNANDとNORは実現可能だがNOTは難しいということかもしれない。


 その難しいとされている量子制御NOTをテレポーション型量子計算なる方法で実現したとのことである。はっきりとはわからないが、回路の中でNOT演算をしようとはせずに、入力の量子状態(エンタングルメント)をそのままにして、同時に入力に関してのビットの情報を古典的な通信の別ルートで出力結果を必要する場所まで転送(テレポーション)しておく、という方法で成功したということなのかもしれない。厳密に見れば、通信のところで半分古典的な方法を使っているが、量子計算のおかげで古典的な方法だけで計算できる限界値は超えることができたということだろうか。離れた量子ビット間での通信を実現したという話も最近あったので、実現可能なことさえ示されれば、通信方法も含めて今後ますますそれらの方法が提案されてくる可能性はあるだろう。


 いずれにしても、これまでのコンピュータは「電子による計算」だったものが、これからは「量子による計算」の時代に向けて、着実に進んでいるようだ。