Sunがクラウド参入を発表

 驚きをもって世界中に流れたであろう、IBMがSun買収交渉を始めたというニュースの同日、実はSunのクラウドサービスの発表が行われていた。買収交渉のニュースがなければ、十分トップニュースになりえた内容である。皮肉な結果だったのか、あるいは狙ってリークされたものなのかどうかはわからない。ただ、買収交渉のニュースが報じられた途端にSunの株価が60%も急上昇したという(銘柄名はJAVA)。何も良い材料がない株式市場がこの刺激に飛びついた格好である。

IBM/サンのクラウド戦略から見る「買収交渉」報道(COMPUTERWORLD)
サン、新クラウドサービスを発表--IBMに買収されるとどうなる?(CNET Japan)
Sun、クラウドコンピューティング市場に本格参入(ITmedia)
IBMのSun買収、メリットと課題は?
Big Blue Wants To Swallow Sun For $6.5 Billion(TechCrunchIT)(和訳)
サン・マイクロ株が急伸、IBMが買収交渉との報道で(Routers)

 Sunの目指すところのクラウドAmazonGoogleとの違いなどを論じれば、それなりに面白いのだろうが、それ以上に、初めからIBMに買収されたらこのクラウド計画はどういう方向に進むのかという興味に移ってしまっている感じだ。Sunのクラウドのプロビジョニングを行っているグループと、経営側の思惑は異なるところにあるように思えてしまう。


 IBMがSunを買収と想像したとき、真っ先に浮かんだのがクラウド体制だったからである。IBMもすでに昨秋クラウド計画は発表はしているものの、あくまで既存のエンタープライズ市場の顧客にシステムのリプレースとして推進するというスタンスにしか見えていない。これまでIBMのサーバーやソフトウェアのサポートを続けてきた企業に、次はIBMクラウドを薦めるということである。一般市場や中小企業などは、GoogleAmazonと提携して提供するという感じに思われた。


 一方のSunは、一般向けと企業向けのパブリックとプライベートの両方のクラウドサービスを提供し、オープンソース、オープンアーキテクチャJavaMySQLOpenSolaris、Open Storageをベースにするという。現状のSunの資産を総動員する形である。これがうまくいかなければ、Sunの未来はないともいえる。


 しかしここで文化が異なるIBMが買収するとどういう形になるかというのは、両者の抱える資産規模が広すぎてちょっと想像が困難である。ある人々はJavaにかけて、IBM発のEclipseJavaを飲み込むというような受け止め方をする向きもあるが、両者の関係はそれは一部のことにしか過ぎない。融合できる部分もあれば競合、水と油の部分もある。とはいえ、本来の意味での「リストラクチャリング」が得意のIBMのことだから、どうにかしてしまうのだろう。


 MicrosoftYahoo!のときのように、大山鳴動して鼠一匹となる可能性もなきにしもあらずだが、この不況下で買収額は小さいが、大型買収交渉の結末はどうなることか。