ムーアの法則は終わる

 コンピュータの素子について言われてきたムーアの法則が、そろそろ終焉を迎えるのではないかという予測がある。法則といっても原理的なものではなく経験上の法則だから、むしろこれまでそれがかなり整合してきたことの方が驚くべきことかもしれない。

ムーアの法則は終わりを迎えつつある?--IBM研究者が発言(CNET Japan)
IBM Fellow: Moore's Law defunct(EETimes)
ムーアの法則 (Wikipedia)

 ムーアの法則は「マイクロプロセッサ上のトランジスタの数は約2年ごとに倍増する」というものだから、24ヶ月おきに2倍となるようなグラフを描くと指数関数となるから、対数をとって各時代のIntelプロセッサの素子数と比較したものが図のグラフである。Intelがあえてムーアの法則を意識してCPUの設計をしてきたのではないかと思えるほどである。


ムーアの法則(上点線:18ヶ月 下点線:24ヶ月) 出典:Wikipedia



 このようなムーアの法則に従う指数関数的増大は、技術革新の行われた初期の頃の進歩ではいろいろな分野で見られることであるそうである。これが成り立っている間は、技術の進歩はまだ初期から中期段階にあるといえそうである。しかし、これからはずれてくるのは、成熟期から衰退期に向かうということを意味するかもしれない。


 ムーアの法則から連想されることには、マルサス人口論での「人口は指数関数的に増大する」ことや商品寿命などを表す成長曲線(ロジスティック曲線、シグモイド曲線)がある。初期から中期にかけて急激に増大するが、時間がたつにつれて次第に頭打ちとなり、いずれ一定値に近づくというものである。現在のような設計のプロセッサがいずれ限界を迎えるということは、以前から言われてきたことであるが、それが今度こそ現実化してくるのだろうか。今後は頭打ちになるCPUをアクセラレータなどの周辺技術の進歩が補完していくことが期待されるという。


 世界でも、ハブル期のときのような金融の倍々ゲームのようなものが終わり、金融危機でChangeではないが転換点を迎えてきていることを象徴しているように思える。


 当面はDual Coreなど既存設計の並列プロセッサが続く時代となるだろう。しかしCPUを2個並べたからといって2倍のスピードや性能が出るわけではない。それでも1個当たりの単価が安いので製品化はできるということだろう。


 ブロセッサの集積化が進めばゲート1個あたりが原子サイズに近づくのは自明である。そこからさらにブレークスルーがあるとすれば、これは量子コンピュータの領域に近づくことになる。しかしそこに至るにはまだまだ技術的な飛躍が大きすぎる。それより前に、何か全く新しい設計のプロセッサが登場してくる可能性はないものだろうか。