絶版漫画を無料配信

 絶版になっている漫画をネットで無料公開するという試みがスタートする。このての話題は常に著作権の影の部分がちらつくのだが、前向きな試みだといえるだろう。

絶版漫画を無料配信する「Jコミ」、ユーザーからのアップロード受付..(INTERNET Watch)

 そもそも絶版になっている漫画とは、すでに出版社は権利を放棄しているものだという。今後とも同じ出版社から復刻される可能性もないのだろう。ただ作者が存命の場合、著作権が残るのは当然ではある。


 そこで作者から許可を得た上で、ネット広告を付けてPDF文書化して配布するという。1つの電子書籍化である。その広告収入で作者に還元するというから、全く日の目を見ないことになるよりは、作者にとってもはるかに朗報となるだろう。また、これまで違法アップロードの対象となっていたものの対策にもなるという。無償で公開されているものをわざわざ違法アップロードする必要はなくなるというわけである。できれば出版社が権利を有している漫画でも、今後復刻の見通しがないものについては、権利を放棄してほしいものだ。


 今や日本のアニメは世界でも有名なものとなったが、その源流となっている過去の漫画が現代の人の目に触れることによって、新たな発見、インスピレーションが湧くことになるかもしれない。ただ取るに足らないだけで消え去ったものもあるかもしれないが、当時の事情で突然連載が打ち切られ、いずれ忘れ去られていったものもあるかもしれない。古文書のように復活すれば、見る人によっては有用なものもありそうだ。


 漫画に限らず、現在の電子書籍化の流れでは、まず絶版になっている過去の名著を電子書籍として復刻させてほしいものだと思っていた。「青空文庫」などはまさにそうした役割を担ってきたと思う。以前からネットで復刻の希望のアンケートを受け付けるサイトがあったが、本当の復刻には気の遠くなるような話であった。ところがこの試みのしくみだと、絶版になっている漫画を有している読者がスキャンして提供してくれたものを使うだけだから、公開も容易である。願わくば作者の原版を提供してもらって、整然としたものを見たいものである。