イノキゲノム旗揚げ戦

 直前まで参加選手が決まらず、開催すら危ぶまれたイノキゲノム(IGF)だったが、なんとか旗揚げ戦を無事終えたようだ。両国国技館にほぼ満員の8400人を超える観客を集めたそうだが、招待券も多かっただろうとはいえ、近年のプロレス興行の低迷ぶりからすれば、意外に健闘したといえるかもしれない。

猪木の最後の革命にファン戸惑い/IGF
小川が橋本のテーマで暴走王復活/IGF
【IGF】エースは俺だ!暴走王・小川が闘魂“遺伝子”受け継ぐ

 試合の様子は、ちょっと危ない某サイトで見た。メインのかつてのWWEの名物カードのアングルvsレスナーが実現した。WWEを見ることはほとんどないが、この2人はかつて、ただのマッチョマンばかりだった頃のWWEに比べて、大男のわりにはパワーばかりでなくテクニックもあることがアメリカでも人気があった理由だろう。アメリカの昔のプロレスの良い部分を残していたということか。2人ともWWEを離れているので、日本で名勝負が実現できたということだろう。もっとも、ギャラも馬鹿にならないから、IGFのスポンサーというのが、やはりナゾである。
 裏を返せば、日本人のプロレスの大物選手でメインを張れるような選手がもはや居ないということでもある。特にヘビー級の選手がいない。


 猪木の呼びかけに唯一応えたのが小川である。猪木の弟子は多いが、事実上、最後の弟子ともいえる小川がもっとも「非常識な」猪木に、真面目に応えている選手ともいえるかもしれない。猪木との師弟関係を守り、盟友・橋本の「爆勝宣言」で入場したのは、昔を知るプロレスファンには泣ける。
 小川−コールマンは、ある意味PRIDEの「格闘技の試合」で最強になれなかった同士の「プロレスの試合」だったといえる。だがこの両者では、あまりのその差がみられない。中途半端だといえるかもしれない。WWEのように徹底したエンターテイメントを目指すのか、一瞬のスキも見せない殺伐とした格闘技の試合を目指すのかということである。


 ともあれ、小川がプロレスに転向してから早くも10年たった。東京ドームでの橋本とのデビュー戦は生観戦した。あのとき橋本に決めた大外刈り(STO)で、一瞬、橋本の体が完全に水平になって浮き、次の瞬間、ドーム内に大音響とともに橋本がマットに叩きつけられたことが記憶に残っている。
 プロレスの方はあまり進歩していないようだが、少し怖い小川が復活してくるのだとしたら、今後に期待したいものだ。小川に必要なのは熱い名勝負だと思うが、今のプロレスの世界にはその相手がいないと思える。

 ファンの世代も代わり、なかなかプロレスは厳しい状況下にある。巨人がいつまでも長嶋監督の人気に頼ってばかりいても人気低下が避けられなくなったのと似て、いつまでも猪木への期待というわけにもいかないだろう。さて次の展開はあるのだろうか。