YouTubeは敵視すべきではない
YouTubeと事業の提携する国内企業が出てきたが、放送局やコンテンツ配信事業者との結びつきも、次第に強くなりそうな雲行きである。自分もそうだが、米国の大統領選の候補者の選挙活動にもYouTubeが使われていた、という社会的影響力も認識を新たにしている要因ではないだろうか。
「YouTubeは敵ではない」−グーグルとコンテンツ事業者が合同会見
本当はYouTubeやGoogleみたいな国内企業があればよいのだろうが、ライブドアだ楽天だ、と放送の既得権益を持つ企業の買収しか頭にないところしかなかったのだから、こういう流れになるのだろう。さかんにマスコミに登場していたころのホリエモンは「放送とネットの融合」ということを、あたかも自分が中心になってやるかのようなことを語っていたが、実際にあの時点では具体的なアイデアを持ち合わせていなかったのだろう。
その後、YouTubeがあっという間にネットの世界で席巻して、誰が見ても可能性を感じさせるものになってきた。一方で、流しの演奏活動をする者まで取り締まる、日本の著作権管理団体はヒステリックなまでにYouTubeの違法ビデオ投稿に敵意を示す。まるで、黒船来航を旧式の大砲で阻止しようとする幕末の尊皇攘夷の志士のように見える。一方、民衆(ユーザ)の方はは黒船がやってくると、物珍しさにみんな海岸まで見物に出かけるなどというのが実態である。いくら鎖国を守れと言ったところで、時代の大きな流れは変わらないだろう。
むしろユーザばかりではなく、著作権管理団体の行動をあまり好ましく思っていない組織も多いようで、それがテレビ局やコンテンツ配信業者であるようだ。ある意味、彼らはネットにもっとも脅威を感じている組織でもある。敵視して時代に取り残されるよりは、積極的に提携してうまく補完できる関係になれればよいと考え出しているようだ。
ライブドアや楽天などの国内IT企業にアレルギーを感じていた放送局が、YouTubeやGoogleの方が安心できるというのも、なにやら情けない話である。ナショナリズムの強すぎるのも困るが、結局、日本のIT企業には信頼できる提携企業がないということかもしれない。外国資本の進出が言われて久しいが、少なくともIT分野で世界に通用する企業はきわめて少ないのかもしれない。